多層化され完全に調整された5Gネットワークは、ローバンド、ミッドバンド、ハイバンドの三つの層を持つケーキに見立てられます。このケーキを食べる前に、それぞれの層がもたらすものを見てみましょう。
- ローバンドは、2020グローバルモバイルアワードを受賞したESS(Ericsson Spectrum Sharing)ソリューションによって、全国的な5Gカバレッジを実現する最も経済的な方法を提供します。ローバンドは、キャリアアグリゲーションを使って他のTDD(Time Division Dduplex)帯のカバレッジを拡大するの際にも有用です。
- ミッドバンドは、5G体験を提供する上でもっともおいしい部分です。より大きなシステム容量とMassive MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)、優れたカバレッジを組み合わせたミッドバンドは、すでにグローバルに利用可能なので、容易に拡張できます。
- 24 GHzを超えるハイバンドは、通信事業者に、前例のないピークレート、低遅延性、大容量を提供する最大の機会を提供します。5Gのハイバンドまたはミリ波(mmWave)帯は、スポーツ競技場や多数のモバイルデバイスが存在する人口稠密な都市部での展開や、ミッションクリティカルなサービスにとって貴重なリソースです。
固定無線アクセスブロードバンド提供の理想的な選択肢
COVID-19の大流行が発生して以来、多くの人々が自宅で仕事をしているため、高速で信頼性の高いブロードバンドの重要性が増しています。4Gまたは5Gで提供されるFWA(Fixed wireless access)は、DSL(Digital Subscriber Line)、ケーブル、ファイバーなどの固定系サービスの利用が限られている地域において、ブロードバンドによる費用対効果の高い代替手段となります。
現在展開されているFWAネットワークの大部分は、6GHz未満の周波数で動作しています。5Gのミリ波は、FWAにギガビット単位の速度を無線で提供するので、ファイバーが不要になります。利用可能な広い帯域幅を使って既存のFWAネットワークにミリ波キャリアを追加することは、ネットワーク容量を増やし、高品質のビデオストリーミングなどに必要な高品質のエンドユーザー体験を提供する理想的な方法です。
最近私たちは、5Gミリ波帯に期待される高ビットレートをどこまで体験できるかを調査しました。非常に長い距離の通信を実現するには、適切な高い出力を備えた無線機とデバイスを配備する必要がありますが、それだけでは不十分です。エリクソンのソフトウェアは、通常よりも長距離の展開に起因するはるかに長い伝搬遅延に対応できます。
基地局の受信機は、当初はトラフィックのユーザーの所在地を知らないため、セル内の最大伝搬遅延を正確に推定することが重要です。受信機が最大で500mの距離から信号が届くことを期待している場合、数km離れた場所にあるデバイスから送信された信号は見逃されます。
私たちは、さまざまな伝搬条件を持ついくつかのネットワークでエリクソンのイノベーションを試験し、多くのことを学んで、それらを反映してソフトウェアを改善しました。最新の試験では、ソリューションが約7 km離れた場所から400MHzのミリ波帯で1Gbpsを提供できることがわかりました。
もう一つの例は、柔軟性の向上と工場フロアの改造を要するIndustory 4.0です。スマート工場では、信頼性と遅延について極端な要件があります。自動車のOEM(Original Equipment Manufacturer)工場では、計画外の1分間のダウンタイムは文字通り数千ドルの損失につながる可能性があるため、有線接続を高速で信頼性の高いモバイル接続に置き換える必要があります。
周波数が高いほど、到達距離は短くなる?
これは物理学の観点からは確かに真実です。そのため、伝搬特性上の課題を克服する方法を見つけることが私たちの使命になりました。2018年に最初の商用ミリ波製品が発売されて以来、私たちは製品のカバレッジ拡大に重点的に取り組んできました。
私たちは、お客様と一緒に学んで限界を広げ続けることを重要視しています。エリクソンの革新的なソリューションは、カバレッジ上の実際の課題を想定して設計されているため、通信事業者は、より少ない数の無線機で対象の領域をカバーし、より多くのユーザーに5Gのギガビットの通信速度を提供できます。
ユーザーに向けられたビームに電力を集中させるビームフォーミングは、伝搬上の課題を克服するためには必須です。ミリ波の場合、基地局で大きなアンテナアレイを使って指向性の高いビームを形成するのみならず、UE(User Equipment)側でも送受信時にビームフォーミングを実行する必要があります。つまり基地局とUEの間にビームペアを継続的に形成する必要があるのです。選択の精度と、UE移動中のビームペアの取得と更新の遅延は、エンドツーエンドの性能とサービス品質に影響します。ここでは効果的で効率的なビーム管理が重要な役割を果たします。
革新的な二つのレベルのビーム管理ソリューションでは、複数の狭いトラフィックビームを使って高いアンテナ利得を実現し、5Gのギガビットレベルの通信速度で多くのユーザーに到達します。オーバーヘッドを小さく抑え、ワイドなアクセスビームで初期アクセス遅延を削減しながらこれを行います。これは望遠鏡や双眼鏡の仕組みに似ています。望遠鏡ではまず空をスキャンして星を探すことから始め、星を見つけたら、良く見えるように焦点を合わせます。これが、ズームを狭めたり広げたりすることの利点です。
考慮すべきもう一つの事項は、ビームペアを更新する速度です。エリクソンのビームフォーミングソリューションは、伝送が中断されない瞬時のビームスイッチングを提供します。これによって狭いビームを頻繁に切り替えて移動するユーザーが、スムーズなデータストリーミングを楽しむことができます。
これと並行して、ピークレートの進化も私たちの目標の一つです。事業者が持つミリ波帯の可能性を最大限に活用するため、エコシステムパートナーと協力してピークレートを継続的に改善しています。私たちは商用ネットワーク上で世界でも最先端の5Gbpsのダウンロード速度を達成しました。ミリ波のピークレートの研究はまだまだ終わりません。
5Gミリ波製品を大規模に展開するには、展開の最適化も重要です。エリクソンのハイバンドおよびストリートマクロ製品向けミリ波AIR(Antenna Integrated Radios)アンテナが、サイズ、軽量、消費電力の点で世界市場をリードしていることを誇りに思っています。
時に現実は想像を超える
私たちは数十年にわたってハイバンド通信の実現に取り組んできました。エリクソンのミリ波技術の先駆的な利用は、初期のGSMネットワークで試作したバックホール製品に見られます。私たちは、その約30年後にミリ波をサポートするスマートフォンが登場するとは夢にも思っていませんでした。
2014年のモバイルワールドコングレスで、最初のミリ波無線機のプロトタイプをお客様に公開して以来、ハードウェアを緊密に統合することで、フィールド性能を損なうことなく、ミリ波ソリューションのサイズ、重量、消費電力を削減できました。
私たちは2018年に、米国の屋外に設置した商用ハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームで世界初の5G通話を行いました。お客様やパートナーと協力して、競合他社に6か月先駆けて、3GPP準拠のルーターを使ってミリ波で5Gを立ち上げることができました。
2020年はミリ波技術にとって節目の年でした。ミリ波をサポートする複数のスマートフォンモデルが市場に現れ、待望のミリ波対応iPhoneも登場しました。2021年には米国以外でも、スマートフォンや産業用途の設計においてミリ波機能が一般化する可能性があります。
2018年以来多くの発展があり、消費者は現在すでに商用ミリ波ネットワークを介してスリリングな通信速度を体験し始めています。たとえば米国のすべての主要な通信事業者が、スーパーボウル2021の期間中に5Gミリ波ソリューションを使ってタンパアリーナとその周辺に素晴らしいギガビットサービスを提供したことをご存知ですか?
研究開発への広範な投資により、5Gミリ波に関する深い知識と経験並びに複数の特許を得ました。エリクソンは、5Gミリ波関連特許において世界有数のポートフォリオを有しており、自社製品に使う技術はすべて自ら開発したものです。
Ericsson Siliconを搭載した専用ハードウェアと共同設計された革新的なソフトウェアのおかげで、エリクソンはハイバンドが秘めた可能性を十分に活用する上で絶好のポジションにあります。まだ開発は初期段階ですが、より緊密な統合を実現することで性能をさらに高め、総所有コストを削減していきます。エリクソンの2レベルのビーム管理ソリューションは、少数のワイドなアクセスビームと多数の狭いトラフィックビームからなります。多数のトラフィックビームが高いアンテナ利得を実現し、ギガビットの速度で多くのユーザーに到達できるようにします。ワイドなアクセスビームが少ないことで、オーバーヘッドと待ち時間も少なくなります。
エリクソンの設計上の選択とエンドツーエンドの包括的なエリクソンRAN(Radio Access Network)アーキテクチャーにより、通信事業者は、帯域、展開、地域の垣根を越えてシームレスなユーザー体験を提供できます。技術分野におけるエリクソンのリーダーシップは、イノベーションへの長期的な取り組みと、お客様や広範なエコシステムとのパートナーシップや信頼を構築する確かな能力に支えられています。
パートナーとの緊密なコラボレーション
ここに至るまでは長い道のりでした。ミリ波は新しく扱いにくい技術で、実用化されてからほんの数年しか経っていません。私たちは開発の過程で、チップセット側とデバイス側のパートナーと一緒に、すべての境界を押し広げてきました。ミリ波通信技術の開発は、ユーザー体験の向上を目指してチームが一丸となって取り組んだ結果であると確信しています。
ここにたどり着くまではしばしば苦痛を伴いましたが、旅は常にエキサイティングで波乱に富んでいました。ミリ波デバイスを少しいじるたびに大きな違いが生じます。開発当初の装置は冷蔵庫ほどの大きさだったので、あまり動かせませんでした。そのほんの数年後の今、スマートフォンがミリ波をサポートしているかどうかは、見た目からはわかりません。
今日、私たちの研究所と試験施設はこれまでになく多忙です。ここで、2021年以降に市場に投入される技術革新を推進する方法をパートナーと一緒に学んでいます。
産業用デバイス(プライベート含む)、ラップトップ、スマートフォンから、お客様の施設に設置された長距離用の5Gミリ波機器に至るまで、さまざまな価格レベルのミリ波製品を目にするのはエキサイティングです。期待が集まるXR(eXtended-Reality)グラスの市場への登場を楽しみにしています。
5Gミリ波技術はまだ初期の段階であり、私たちはお客様やより広い通信エコシステムと共に、完全に調整された多層化5Gネットワークの可能性を最大限に探求することに取り組んでいます。容量と通信速度が一番小さな懸念事項であるという通信技術を一つ挙げるとすれば、それは5Gミリ波です。私たちはこの旅で、業界をリードするプレーヤーとパートナーとして協力していることを誇りに思います。
COVID-19の状況にもよりますが、次回誰かの誕生日のお祝いで大きなケーキを見たら、5Gネットワークのことを思い出してください。スポンジ層の甘いフィリングを味わうだけでなく、その上層を覆うアイシングもお楽しみいただけるはずです。
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