RAN仮想化と5Gのユースケース
エリクソンは、仮想化NRベースバンド分散ユニット(汎用ハードウェアプラットフォーム上のソフトウェアとして実装されたvDUまたはDU機能)の設計を研究・試験しています。最近エリクソンは、GPUのNVIDIAやCPUのインテルなど、補完的な技術分野の最先端のプロバイダーと協力して、このような製品の開発に向けた一歩を踏み出しました。この取り組みにより、データセンターのような環境や産業および企業向けプライベートネットワークへの展開など、新たな課題に応えるソリューションが可能になります。その利点には、オープンソースのクラウドプラットフォームとCOTS(Commercial Off-The-Shelf)ハードウェアの使用による、展開と運用のシナジーが含まれます。
5Gの新たなユースケースは、一般に二つのグループに分類できます。デバイスとアプリケーションサービス間を低遅延で往復することを必要とするグループ(クラウドゲーム、サーバー側のビデオレンダリング、ディープラーニングなど)と、ローカライズ(局地化)/現地に括り付けのアプリケーション展開を要するグループ(Industory 4.0、工場の機械・センサー・アクチュエーター用のコントローラーソフトウェアなど)です。前者のカテゴリーには、ハイパースケールクラウド(AWS、Azure、GCP)からアクセスネットワーク(RAN)に近づくアプリケーションサービスが含まれます。後者には、スタンドアローンのプライベートネットワークに展開されるRANとコアが含まれます。どちらのグループでも、接続性(5G)とITサービスの融合が暗に求められています。
しかし落とし穴があります。アプリケーション側の需要が発生するまでに、こうしたアプリケーション要件(低遅延またはローカライズ/プライベート)をサポートできるほどネットワークが進化していない可能性があるのです。同時にネットワークによるサポートの欠如は、多くのアプリケーション開発者の参入が望めないことを意味します。このような状況を回避するために、通信業界のリーダーである私たちは行動を起こさなくてはなりません。映画「フィールドオブドリームズ」のケビン・コスナーのセリフを借りると「それを作れば、彼らは必ず来る」のです。論点は明確です。大まかに「エッジ」と呼ばれるものには、当初は「ベース」となるワークロードが必要なのです。NRベースバンド処理がその役割を果たし、アーキテクチャーとテクノロジースタックの変化を促し、より長い時間枠にわたる新しいサービスの基盤として機能します。
仮想化と加速を調和させる
vRANは、5Gがソフトウェアで定義され、プログラマブルになることにかかわっています。定義に従えば、vRANにはソフトウェアとハードウェアの分離が含まれます。PCの場合と同じように、事業者はさまざまなサーバーで同じ5Gソフトウェアスタックを実行し、ハードウェアを交換して容量を拡張できることが期待されています。これには代償があります。システムの統合の程度が低いと、電力1ワットあたりの性能が下がるのです。しかし新しいネットワーク機能のペースと、新たなユースケースへの5Gの適応性を大幅に改善するという利点もあり、エリクソンはこの分野を先導しています。
多くの5Gユースケースは純粋なCPUプラットフォームで適切に動作しますが、帯域幅が増加し高度なアンテナシステムが展開されると、x86コアはそれについていくのが苦しくなり、非実用的なレベルの電力を消費し始めます。5G NRのコンピューティング負荷の高い物理層とスケジューリング負荷に対応するためには、ハードウェアのアクセラレーションが必要となります。
デスクトップのゲームからスーパーコンピューターのベンチマークまで、ハードウェア・アクセラレーションはGPUを使って実現されます。ハードウェアのアクセラレーションには他の方法もありますが、通常はFPGAまたはASICを使ったカスタマイズが必要となるので、COTSハードウェアは対象になりません。コンピューティング密度に関して言えば、GPUはCPUよりも多くのチップ領域を計算に費やしています。技術の進化に伴い、GPUは高性能コンピューティングという狭い範囲のワークロードに対して自由に最適化できるようになり、一方のCPUはデータベースやオフィスアプリケーションなどのより多様なワークロードを対象にするようになっています。
NRのCPU実装で高い性能を得るには、SIMD(Single Instruction Multiple Data)を使ってシングルコア・シングルスレッドの性能を大幅に最適化する必要があります。これは一般的に楽しくエキサイティングな仕事ですが、危険な道でもあります。キャッシュミスのない最後の最適化が完了した後は何ができるのでしょうか?より高速なCPUクロックレートを待ちますか?またはCPUをマルチコア化しますか?前者の選択肢は行き止まりです。後者の選択肢は、シングルスレッドのコードが非常に高度に最適化できることで、NRの物理層で困難が生じることがわかっています。マルチコアに移行するには、必死で設計したデータの局在性を犠牲にする必要があります。つまり最初のコアの先のいくつかのコアは、残念ながらコアあたりの性能損失に起因して並列化で得られるよりも多くのコストがかかる可能性があるのです。悪いお知らせです。
一方でNVIDIAのGPUでは、最初から極端なマルチスレッドアプローチを採用できます。チップ領域あたりの有効コア数はクロックレートよりも速く増加する傾向があるため、時間の経過とともに継続的な効果が得られます。またGPUはすべての主要なクラウドプラットフォームに存在し、あらゆる業界で無数のAIワークロードを実行しています。従ってCOTSハードウェアプラットフォームの設計に適しています
要件
NVIDIA GPUは、x86アーキテクチャーの「COTS性」を犠牲にすることなく、性能とプログラマビリティを提供するアクセラレーションプラットフォームを提供します。ここでは、プラットフォームが満たす主要な要件の概要を示します。
- クラウドネイティブで、x86仮想化とうまく統合
- 柔軟なプログラミングモデルを使ってCおよびC ++でプログラム可能
- ツールとライブラリのエコシステム
- 多くの産業と研究機関に専門の設計者が存在
- 大量市場向け大量生産
- 非常に小規模な実装から非常に大規模な実装まで拡張できる機能
CUDAエコシステムは、共通の計算ビルディングブロックの素晴らしいライブラリへアクセスできる活気のある大規模な開発者コミュニティを擁しています。この点で、高性能コンピューティングの分野においてCUDAとNVIDIA GPUは比類ない存在です。またGPUはPCゲームも対象としていることから、NVIDIAは大量生産とロジスティクスに対応できます。
エリクソンは、現在のポートフォリオを補完するRAN仮想化アプローチとして、NRベースバンドを展開するもう一つの方法を提供します。COTSハードウェアをベースにすることで、AR(Augmented Reality)、AIとディープラーニング、サーバー側のビデオレンダリングなど、さまざまな新しいエッジアプリケーションを同じ場所に配置できます。さらに、プライベートネットワークのニーズに合わせてソリューションをスケールダウンできます。ベースバンド処理と新たに登場した5Gユースケースを近接して実装することには明らかな利点があり、どちらもNVIDIA GPUベースのハードウェアアクセラレーションの恩恵を受けます。
[1]エリクソンモビリティレポート2019年11月版および2019年第4四半期更新版
これは5G RAN仮想化に関する二つの記事の2番目です。最初の記事はVirtualized 5G RAN: why, when and how?をご覧ください。