企業や公共部門がデジタルトランスフォーメーションを受容しつつある今、私たちは劇的な変化の入り口に立っています。この変化は、高性能なモバイル接続がなければ、高度なデジタル化も成しえないという単純な真実を教えてくれます。
今後5年から10年の間に、電化、自動化、デジタル化という、相互に関連性の深い三つの大きな産業横断的トレンドが加速すると見ています。これらのトレンドが秘める可能性を実現するには、モバイル、クラウド、AIという三つの相互に関連したテクノロジーが必要です。これらのテクノロジーが連携することで効率と生産性が向上し、デジタル化された使い易いサービス、没入型体験、より持続可能なソリューションが実現可能になります。
モバイル通信がなければ、クラウドもAIも真に拡張することはできません。だからこそ高度な接続性の次の波、特に5Gの優れた機能を充分に拡張することが非常に重要です。消費者のデジタル化を進めアプリ経済の急速な拡大を牽引した過去のテクノロジーシフトと同様に、モバイル通信の次の波は様々な産業を再構築し、新しいネットワークの価値を解き放ち、分野横断的なイノベーションを実現します。
モバイル接続の次の波を現実に
近年、モバイルネットワークの構築方法に根本的な変化が起こっています。エリクソンは現在、オープンでプログラマブルなネットワークを設計し構築しています。耐障害性とエネルギー効率に優れたこうしたネットワークは、可用性、信頼性、速度面で優れたユーザー体験を確保します。
またプログラマブルなネットワークはソフトウェアで管理できるため、ネットワークの動作やローンチ可能なサービスを迅速に変更し、柔軟に制御できます。これによってより迅速で安全かつ差別化された接続が可能になることで、各企業や政府機関の顧客に合わせたソリューションを提供する優先度ベースのサービスレベルを生成できます。
エリクソンはまたイノベーター、起業家、企業が独自のネットワーク機能を活用する方法も変えようとしています。モバイルネットワークは世界史上最大のプラットフォームですが、これまではネットワークからユーザーへという一方向でのみ運用されてきました。私たちはこれを双方向にして、開発者がネットワークと対話し、その独創的な機能を使ってイノベーションを起こせるようにしたいと考えています。
私たちはネットワークAPI(Application Programming Interfaces)を通じてこの根本的な変化を推進しています。ネットワークAPIは、モバイルネットワークとアプリケーションが相互に対話し、開発者が簡単なコマンドでサービス品質、速度、遅延特性、ロケーションなどの特定のネットワークリソースを呼び出すことを可能にする、標準化されたインタフェースです。
私たちの目標は、何百万人もの開発者が5Gテクノロジーを使って革新的なアプリケーションを試験し、革新し、構築することです。
私たちは昨年、世界最大級の複数の通信事業者との新たなパートナーシップを発表しました。通信事業者はネットワークを開放し、集約されたネットワークAPIのグローバルなプラットフォームを通じて高度な機能に簡単にアクセスできるようにします。これにより金融、物流、製造、そして私たちも想像しないような他の分野に新たなユースケースが生まれることでしょう。
高度な接続性の実際の影響
今日では多くの産業部門が独自のソリューションを使っており、単一の接続技術基盤がないため、効率向上やコスト削減などのスケールメリットには限界があります。標準化されたエリクソンのネットワークが産業を変革できる分野には、プライベートネットワーク、ファーストレスポンダー(救急、消防、警察など)向けのネットワーク、非地上系ネットワークと呼ばれる衛星接続などがあります。
製造業の企業はこれらの新しい種類のネットワークをネットワークAPIやその他のイノベーションと組み合わせることで生産プロセスを再設計し、小売業者はあらゆる場所で主たるアクセステクノロジーとしてセルラー接続を使えるようになり、緊急サービスとメッセージングが世界の隅々に至るまで利用できるようになります。テキサス州にあるエリクソンの5G接続された工場では、デジタルツインなどのイノベーションにより労働生産性が倍増しています。
モバイルイノベーションの次の波の三つの例を詳しく見てみましょう。
- ミッションクリティカルなブロードバンドにより、ファーストレスポンダー機関の間でシームレスな協力が可能になります。医療システムは患者のデータをリアルタイムで報告し、動画で知見を補足できます。現場の医療スタッフは医師の指示をその場で受け、また発信者の状態をモニターして心臓発作などを正確に診断するAIベースの音声分析などのさまざまな新しいアプリケーションを利用できます。
- 港湾は世界経済の基盤として世界の物資の最大90%を輸送しており、主に運用効率の改善と脱炭素化を追求しています。シンガポールではSingtelと共にトゥアス港で5G Advanced接続を展開し、5G対応のAGV(無人搬送車、Automated Guided Vehicles)を接続しています。これによりリアルタイム出荷トラッキングが改善され、クレーン操作の最適化が進み、ドックと船舶の間でスムーズな貨物輸送が可能になります。
- ネットワークAPIにより、オンラインでの不正防止が強化されます。Amazon Web ServicesはVonageおよびエリクソンと協力してAPIを活用し、生成AIで強化されたSIMスワップ検出やセキュア認証などの機能を通じて、モバイルセキュリティを強化しています。
移動体通信の次の波が明日の勝者を決める
今日5Gでリードしている企業、国、地域がイノベーションの大部分を享受し、明日の経済的・政治的大国となるでしょう。鉄道が工業化を促進したように、次世代のモバイルネットワークは政治経済的環境を再構築し、持続可能な成長を推進します。
米国と中国が消費者プラットフォーム経済で成功したのは、全国的な4Gネットワークを最初に構築した国だからです。インド、米国、中国、中東の一部はすでに5G時代を先取りしています。たとえば中国は10,000以上のプライベートネットワークを展開して企業のデジタル化を実現することで生産性の大幅な向上を実現し、またインドは5Gへの取り組みを強化し、1年たらずで100万以上の5Gセルを展開しています。
一方で欧州は遅れをとっています。私の同僚のジェニー・リンドクヴィスト(Jenny Lindqvist)は、新しいブログ記事で、欧州は全体として、規制面で世界をリードし続けるか、それとも5Gなどのイノベーションやテクノロジーで競争するかという、広範な影響を及ぼす選択に直面していると書いています。
明日の成長を促進するイノベーション
私は元来楽観主義者で、常に自分の未来を形作るのは自分だと信じてきました。デジタル化は加速する一方で、通信業界は世界中の社会に変革をもたらす100年に一度の機会を迎えています。世界各国は、技術的なリーダーシップを得るか、それとも傍観者になるのかという重要な選択を迫られています。
企業や政府、あるいは通信業界内のこれまでのやり方から離れることは難しいかもしれません。しかし私の父はよく言っていました。「木を植えるのに一番いい時はいつかって? 40年前だよ。二番目に良い時は今日なんだ。だからさっさと始めよう」
今こそ始める時です。皆さんはこれに参加する準備ができていますか?
エリクソンが、開発者が高度な5G機能を活用してモバイルイノベーションを促進するのをどのように支援しているかをご覧ください。
本記事はWorld Economic Forum Agendaのサイトにも表示されています。