通信事業者の製品構成を変革するマルチエージェントAI
*本ブログは2025年6月16日投稿の英語版の抄訳です。
エージェンティックAIは、OSS/BSS(Business and Operations Support Systems)を変革し、ユーザー体験を再構築しています。複雑なワークフローの自動化からプロダクトの迅速な構成まで、このテクノロジーがお客様の業務にとってどのような意味を持つのかを探ります。
Head of Development Group Artificial Intelligence, Business and Operations Support Systems

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生成AIで販売、デリバリー、収益の回収を容易に
AI(Artificial Intelligence)には変革の力がありますが、生成AI(Generative AI)はこの変革を次のレベルに引き上げます。生成AIは、オリジナルのコンテンツを生成することで、データドリブンのビジュアルからネットワークの高度な可視化、人間のようなインタラクションに至るまで、効率、成長、顧客満足度の観点で実現可能なことを再定義しています。
生成AIをOSS/BSSに統合することは単なるアップグレードではなく、通信業務の変革的なオーバーホールを行うことに相当します。生成AIは、ワークフローの自動化、顧客とのやり取りのパーソナライズ、リアルタイムで実用的なネットワークの知見の提供を通じて成長を促進し、顧客満足度を高めます。生成AIは、通信サービスの販売、提供、収益の回収を容易にします。エリクソンが委託したOmdiaの調査により、CSP(Communication Service Providers)の46%が、生成AIが今後2年以内にOSS/BSSビジネスに影響を与えると予想していることが明らかになりました。これは単に既存のプロセスを改善するだけでなく、運用のあり方を根本的に変えることを意味します。
生成AIがCSPのOSS/BSSビジネスに大きな影響を与えるのはいつか?
生成AIは、製品の構成やCPQ(Configure-Price-Quote)プロセスの自動化などを可能にし、とりわけ新しい製品の販売と提供を容易にします。生成AIは重要な知見を提供して加入者のネットワーク体験を高めるのです
生成AIによる製品構成の効率化
複雑な製品ポートフォリオの管理は困難です。従来の人力による構成プロセスはエラーが発生しやすく、それは顧客にとってもビジネスにとっても望ましくありません。生成AIは、人力による構成プロセスをインテリジェントな自動化に置き換え、エラーを減らして市場投入時間を短縮します。エリクソンのインテリジェントなProduct Configuration Assistantは、OSS/BSSの自然な一部として大きな効果を発揮する生成AIの代表的な例です
製品の構成は、OSS/BSSのCore CommerceとMonetizationの両方のドメインに関わります。会話型AIはCatalog ManagerとChargingに接続し、製品構成のタスクを支援します。このインテリジェントなアシスタントは、さまざまなユーザーロールに適応するので製品管理の複雑さが簡素化され、通信事業者は戦略的な取り組みに集中できます。
Video: Ericsson Product Configuration Assistant
アシスタントによる人間のようなインタラクションにより、ユーザーは自然言語で要件を指定できます。製品定義プロセスを理解しているアシスタントは、ユーザーと対話して指針を求めることで、ビジネス要件文書の作成を推進します。これにより、新製品を技術カタログに盛り込む段階的で複雑なプロセスが簡素化されます。生成AIベースのアシスタントは、製品生成の正しい手順と順序を理解し、BSSが処理するための適切な構成データを生成します。より少ない労力とリソースで、より迅速に製品を構成できます。また製品は当初から正当かつ一貫性を伴って構成されます
64% CSPs believe introducing AI will benefit catalog management (Omdia survey)
Source: Omdia Survey: Driving business growth with AI-enhanced OSS/BSS
生成AIが製品構成をどのように強化するかを探る
製品を構成するプロセスを自動化しスピードアップする方法を探ってみましょう。
従来のPO(Product Offer)の作成は、製品マネージャーとマーケティングマネージャーにとって迷路を歩き回るようなものでした。自分たちで既存の製品が再利用できるかどうかを確認し、製品カタログをふるいにかけ、さまざまな製品やサービスの仕様に合わせて構成を構築する必要がありました。
Product Configuration Assistantを使えば、マネージャーは自然言語で要件を入力できます。ハンドルを握るアシスタントがカタログを参照して再利用できるかどうかを確認し、必要に応じて変更を加えた新しい製品を作成します。これによりマーケティングマネージャーは、従来の複雑なプロセスから解放されます。

Figure 2: Gen-AI automates manual product configuration business process
タスクを適切に実行するアシスタントには複数の有用な機能があります。
- ナレッジベース: 直感的な会話型のアプローチを通じてシステムナレッジを提供し、人力で情報を取得するのに費やす時間を短縮します。
- 構成支援: 複雑な仕様にアクセスして仕様を作成することで、迅速な製品開発を実現します。
- 文脈指針: アクティブなタスクに基づいて、適切なタイミングで関連情報を提供します。
- タスク固有の行程: ユーザーを事前定義されたワークフローに正確に導きます
生成AIを次のレベルに引き上げるエージェンティックAI
ここで直面する主な課題は、通信分野の複雑な提案の構成を、専門的で自律的なタスクに分解することです。マルチエージェントAIアーキテクチャー(エージェンティックAI)は、より正確で直感的で自動化された製品構成を支援します。
エージェントには主に二つのタイプがあります。
- コンテキストを維持し、継続的な会話に加わりながら構成を継続的に改善するインタラクティブエージェント
- 特定のタスクを独立して実行し、提案が有効であることを確認し、可能な限り最善の方法でルール化と構成を行う自動化エージェント
思考-決定-行動-フィードバックのループで動作するAutonomous ReAct(reasoning and acting)エージェントは、ユーザーの意図を継続的に分析し、情報に基づいた意思決定を行い、最適な製品構成が達成されるまでそれを反復します。
専門 エージェントは、次のような他の専門的なタスクを完了できます。
- 製品知識エージェント – 通信製品、サービス、制約に関する最新の記録を保持します。
- ユーザーインテントエージェント – 自然言語の質問を理解し、欠落している詳細を特定し、明確な質問をすることで入力を絞り込みます。
- 構成エージェント – 価格設定ルール、収益への影響、ビジネス上の制約に基づいて製品バンドルを最適化します。
- ユーザーインターフェースエージェント – 対象とするユーザーに基づいてインタラクションを適応させ、体験をパーソナライズします。
やがてシステムはそれ自体で提案を構成できるようになります。
イノベーションの迅速化を容易に
私たちは、生成AIを使いやすく、標準化された、回復力があり、安全なものにする方法を考えてきました。私たちの原動力となっているのは、OSS/BSSに対応した包括的なAIフレームワークです。このフレームワークにより、セキュリティとプライバシーを優先しながら数多くのAIドリブンのソリューションを迅速に開発できます。

Figure 3: Facilitate rapid development and scaling of AI applications
このフレームワークの中核となるのは、エリクソンのTelco IT AI Engineです。生成AIアプリケーションには次のものが含まれます
- LLMOps(Large Language Model operations)、RAG(Retrieval Augmented Generation)、オーケストレーションおよびストレージレイヤー: 効率的なAIタスク管理とデータ処理を確保します。
- セキュリティ機能: リスクプロファイリング、敵対的トレーニング、暗号化プロトコル、ロールベースのアクセス制御など、敵対的攻撃やモデル逆転やデータポイズニングなどのリスクを軽減する、多層化されたセキュリティ機能です。
- 倫理上の配慮: AIドリブンの意思決定が倫理基準と法的規制を遵守していることを確認するために組み込まれたガードレールです。監査と透明性メカニズムによりAIの意思決定を追跡することで、説明責任を確保できます。
- 可観測性: 性能メトリックを継続的に監視し、異常に対する自動アラートを提供して、最適な顧客体験を維持します。
成功を収めるためには、再利用性を重視したOSS/BSSランドスケープとの包括的な統合が必要です。AIのユースケース開発を加速するために、私たちは事前に統合された通信業界のナレッジキットを開発しました。これらのキットをTMF(TM Forum)や3GPP(3rd Generation Partnership Project)標準などの通信業界のナレッジソースと組み合わせることで、実装時間を短縮できます。
このフレームワークは、さまざまなオープンソースおよび商用の基盤モデルを柔軟に統合できます。サービスデリバリーエージェントが、生成AIのユースケースを公開する標準UIフロントエンドと、運用チームが実行するアクティビティを自動化します。
このAIフレームワークは、生成AIアプリケーション開発の規模を拡大し加速するための最も回復力のある基盤を提供します。
OSS/BSS搭載の生成AIで飛躍的な向上を
LLM(Large Language Model)を備えたOSS/BSSシステムに生成AIを統合することで、構成エラーを減らし、サービスを迅速かつ簡易に市場に投入して、顧客満足度を高めることができます。生成AIは複雑なプロセスを合理化し、文脈指針、タスク固有の工程、強固なナレッジベースを提供します。高度なAIエージェントを活用することで、通信業界は顧客中心型のサービス提供に適したソリューションを提供できます。
生成AIは効率を高め、成長、イノベーション、戦略的優位の創出を実現します。セキュリティ、プライバシー、倫理上の配慮も備えながら、現在と将来の課題に自信を持って対処できることでしょう。御社にはAIに真の課題を解決させる準備がありますか?
Product Configuration Assistantは、OSS/BSSを強化する20を超えるクラウドネイティブAIおよび生成AIアプリケーションのスイート、Ericsson Telco IT AI Appsに含まれる生成AIアプリケーションです。
詳細については以下をご覧ください。
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Maximize OSS/BSS impact with AI and Gen-AI
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