自己紹介と現在の役割
吉田奈穂子さんは現在、ネットワークスR&Dジャパンの部長として、本社のカスタマーエクスペリエンスグループと日本のチームが融合したユニークな混成組織を率いている。彼女のミッションは、ソフトウェアの品質確保を通じてお客様の体験価値を向上させることだ。技術的な問い合わせへの対応から製品デリバリー後のモニタリングまで、その業務は多岐にわたる。
「最も重要なのは、ソフトウェアの価値をお客様へどう伝え、体験を向上させるかという点です」。製品が世に出た後の評判や品質を細かく改善していくプロセスに、日々情熱を注いでいる。
エリクソンとの出会い ― 国際会議で感じた「組織の強さ」
通信業界でキャリアを積み、エリクソンが4社目となる。かつて日本企業の研究所に所属していた頃、国際標準化会議「3GPP」で目の当たりにした光景が、その後の人生を大きく変えることになった。
「エリクソンは数十人規模のチーム体制で臨み、合理的かつスピード感のある議論を展開していました。少人数で挑んでいた当時の私にとって、その戦略性と組織力は圧倒的で、『悔しい』という気持ちが湧いたのを覚えています」
より強い組織の中で自分を試し、学びたい。そしていつか日本を強くしたい――。その想いが、彼女をエリクソンへと目を向ける原動力となった。
外資への不安を越えて──長期的に働ける環境
外資系企業に対して「入れ替わりが激しい」というイメージを持つ人も少なくない。しかし、実際に飛び込んで目にしたのは、意外にも腰を据えて働く人々の姿だった。
「確かに一般的にはそう思われがちですが、エリクソンでは10年、20年と勤続している社員も珍しくありません。日本の職場も本社も同じように、長く働ける環境です。これは採用面でも安心材料になります」
ウェルビーイングを尊重する ― 休暇を前提に仕事を設計する働き方
エリクソンでの働き方を語る上で欠かせないのは、成果とプロフェッショナリズムを前提に、個人のウェルビーイング(健康・生活)を尊重する考え方だ。休暇は“例外”ではなく、予定として先に確保し、その前提で業務を設計する。
「スウェーデン本社では、朝早く始業し、午後3時以降は会議を入れない文化が根付いています。オフィスも夕方には人が少なくなるほどです」
一方で日本では、スウェーデンをはじめ海外拠点と連携する会議が多く、時差の関係で16時以降のミーティングが発生することもある。たとえば、日本・スウェーデン・カナダなど複数国を跨ぐ場合は、日本時間の21時頃になることもあるという。その分、「夕方以降に会議がある日は朝の始業を10時以降にする」など、勤務時間を柔軟に調整しながら生活とのバランスを取れる点も、この環境の魅力だ。
社内に息づく「フィーカ」文化
北欧の温かな文化は、日々のコミュニケーションの中にも息づいている。その象徴が、お茶とお菓子を囲んで休憩を楽しむ「フィーカ(Fika)」の習慣だ。
部署内では、誰からともなく声が上がり、時には50人規模でフィーカが集まることもある。「業務の合間に立場を超えて交流することで、日常的なコミュニケーションが自然と促進されています」。このリラックスした時間が、チームの絆を深める鍵になっている。
英語で広がる仕事の幅
多国籍なメンバーが集まる環境では、会議の基本言語は英語だ。しかし、そこには過度な緊張感はないという。
「お互いネイティブではないこともあって、下手な英語でも一生懸命に聞いてくれる雰囲気があります。日本語を勉強している外国籍社員も多く、お互いの言語を学び合える環境です。英語力は入社後でも十分に鍛えられると思います」
理系エンジニアとしての道
高校生の頃は宇宙飛行士に憧れ、大学では物理学を学び、大学院では工学を学んだ。新卒で入社した会社では希望していた宇宙開発には配属されなかったものの、無線通信の研究職をアサインされたことが、現在のキャリアの出発点になった。
その後、国際標準規格の策定から開発を経て、技術が私たちの日々の生活を支えるインフラとして社会に実装されていくまで――そうしたエンドツーエンドのプロセスに携わる中で、通信業界が持つ「スピード感」と「革新性」に魅了されたという。
無線通信は単なるコミュニケーションツールにとどまらず、人々の生活を支える基盤インフラとなり、さまざまな産業へ、さらには宇宙へも広がってきている。
「新しい技術を提供することで、人々の生活を豊かにし、社会課題の解決にも貢献できる通信業界は、自分にとって面白く、やりがいがある」そう確信してキャリアを広げてきた。常に進化し続けるこの業界は、エンジニアとして飽きることのないフィールドだ。
印象的なプロジェクト ― 日本発案が世界標準に
これまでのキャリアで最も鳥肌が立った瞬間として、ソリューションマネージャー時代のプロジェクトを挙げる。日本のお客様の要望を形にするため、彼女は粘り強く本社のエンジニアたちと交渉を重ねた。
「現地発案を本社に認めさせるのは簡単ではありませんでしたが、スウェーデンへ直接足を運び、議論を尽くしました。結果として正式開発が決まり、その機能が世界中のオペレーターに採用されたときは、日本のニーズが世界の標準になったという大きな手応えを感じました」
仕事のやりがいと苦労
「人の役に立って『ありがとう』と言われること」が、現在の原動力だ。しかし、そこに至るまでは育児と仕事の両立という大きな壁もあった。
「入社当初はとにかく時間が足りませんでした。優先順位を明確にし、上司に相談し、何より社内の女性コミュニティで悩みを共有できたことが支えになりました。一人で抱え込まず、周囲の力を借りることが乗り越える秘訣でした」
風通しの良さと柔軟な文化
「無駄を削ぎ落とし、失敗を学びと捉える」合理的な文化に、心地よさを感じている。
「新しいことへの挑戦が奨励され、もし失敗してもネガティブな評価にならない。この安心感があるからこそ、誰もが恐れずに挑戦できるのだと思います。こうした合理性や柔軟性は、スウェーデン発祥のグローバル企業として大切にしている価値観だと感じます」
今後の挑戦
彼女の視線は、すでに未来へと向いている。現在取り組んでいるのは、日本と本社を繋ぐ実地研修制度の構築だ。
「人材や知識の交流をさらに広げ、相互に学び合えるフレームワークを作りたい。また、モバイル技術を通じて環境負荷低減に貢献するなど、サステナビリティ(持続可能性)を推進する部署が日本にもできれば嬉しいです」
これから入社を考える人へ
最後に、挑戦を迷っている人へのメッセージを贈ってくれた。
「私のモットーは『やらずに後悔するより、やって後悔しよう』。迷ったら挑戦する。失敗しても学びになる。エリクソンは、そんな挑戦を前向きに評価してくれる環境です。世界中に似た悩みを抱える仲間がいて、課題を共有するだけで心は軽くなります。自分の可能性を試したい人にとって、ここは最高の職場です」