スマートフォンのビデオ会議体験を改善するカギはアップリンク
シームレスで高品質なビデオ会議体験は、通話中の安定したアップリンク性能に大きく依存しており、これはダウンリンク中心のアプリよりも厳しい要件です。
主な知見
スマートフォンで優れたビデオ会議体験を実現するには、最低でも一貫して4Mbpsのアップリンクスループットが必要です。
ビデオ会議の体験品質が低下する主な原因は、多くの場合、基地局がスマートフォンの送信信号を十分に受信できなくなったことによるアップリンクカバレッジの不足です。
アップリンクカバレッジの改善は、ローバンドの広範な展開、四つのローバンド受信機を備えた無線機の導入、高度なRANソフトウェア機能の導入、基地局間距離の短縮が有効です。
モバイルワーカーの増加とハイブリッドワークモデルの普及に伴い、スマートフォンによるビデオ会議は、リモートでのコラボレーションやコミュニケーションに不可欠となっています。
ビデオ会議におけるユーザー体験
エリクソンの SmartphoneLab が以前実施した研究[1]では、現在最も人気のあるWeb 閲覧や動画ストリーミングコンテンツをスマートフォンで快適に利用するには、ダウンリンクで約 20 Mbps、アップリンクで約 1 Mbps のスループットがクリック時に必要であることが示されました。この速度を超えてもユーザー体験の向上はわずかですが、ビデオ会議の場合、アップリンク要件は Web 閲覧や動画ストリーミングよりも厳しくなります。
高解像度(1080p)のビデオ会議は、最高のユーザー体験を提供します。この解像度では、Microsoft Teams[2]やGoogle Meet[3]などのスマートフォンアプリは、アップリンク・ダウンリンク共に 4 Mbpsを安定的に必要とします。「安定的」という言葉は重要で、ビデオ通話中に毎秒4Mbpsが常時利用できなければならないことを意味します。
展開済みの 5G ネットワークが安定した4 Mbps のアップリンクを提供可能かを評価するために、ライブ5Gネットワークでアップリンクのスループットの測定値が収集されました。サンプリングされたエリア内のネットワークに接続しているすべてのユーザーの活動が、1 週間にわたって測定されました。この分析は、複数の主要都市部をカバーする RAN で収集された数十億のデータサンプルに基づいています。ビデオ会議の体験は、特定のアップリンクスループットで達成可能な動画品質に基づいて「良い」(>4 Mbps)から「悪い」(<0.5 Mbps)で評価されました。図 18 の結果は、欧州の5Gネットワークが北米の5Gネットワークに比べて「悪い」と評価されたサンプルが大幅に少ないことを示しています。北米ではアップリンクが 0.5 Mbps未満のサンプルが最大15%に達しました。
5G ネットワークにおけるアップリンクカバレッジの改善
図 18 で「悪い」と評価されたサンプルの背後にある根本原因を完全に特定するには、より詳細な分析が必要です。これまでの経験から、アップリンク性能の低下は、無線基地局間の距離が長すぎることや、建物の外壁や地形などの障害物が原因であることが示唆されています。
無線基地局のダウンリンク送信出力は、スマートフォンが基地局にアップリンクで送信するときに使える最大出力の少なくとも数百倍です。簡単に言えば、基地局はダウンリンクで「大声で話す」ことができますが、ユーザーデバイスはアップリンクで「小声でささやく」ことしかできません。これが、セルラー通信がアップリンクでカバレッジ制約を受けやすい理由です。この課題は、次の展開を通じて複数の方法で対処できます。
- すべての無線基地局でローバンドをサポートすること(ローバンドの電波はより遠くまで届き、壁などの障害物を通過しやすいため)
- ローバンドに四つの受信機を備えた無線機
- FDD(周波数分割複信)のミッドバンドと、より多くの受信機を搭載した無線機(FDD Massive MIMO により4 つまたは8 つ以上)を組み合わせ、ローバンドを最適活用すること
- アップリンク CoMP(マルチポイント協調通信)、ローバンドをオフロードするマルチレイヤー制御を伴う高度なトラフィックステアリング、クローズドループ電力制御、アップリンク対応型モビリティなど高度な RAN ソフトウェア機能を導入すること
- 屋外・屋内とも基地局サイトを増やし、エンドユーザーデバイスとの距離を短縮すること