5G NRスタンドアローンの展開が間近に迫っており、主要な通信事業者は2020年中の市場展開を計画しています。しかし移動体通信業界の主要なトレンドであるにもかかわらず、「5G NRスタンドアローンではなぜ5GCとして知られるまったく新しいコアネットワークアーキテクチャーが必要になるのか」という疑問は依然として残されたままです。
この質問に対する単純な答えは、「5GCがなければ、マルチプレーヤーAR (Augmented Reality) ゲームなどの高度な5Gユースケースが決して実現できないから」です。
現在のすべての商用5G展開は、デバイスとネットワーク間のシグナリングに既存のLTE無線アクセスを使うNSA(NR Non-Standalone)技術と、5G NSAをサポートするように拡張されたEPC(Evolved Packet Core)ネットワークが基盤になっています。この方法によって、既存の4Gネットワークを最大限に利用しつつ、新しい5Gサービスを迅速に導入できました。しかしこのことが、ネットワークを使って5Gの潜在能力を最大限に引き出し、IoT(Internet of Things)や産業オートメーションの重要なユースケースの大部分をサポートすることが不可能な理由でもあります。
4Gネットワークのアーキテクチャーは、当時存在していたモバイルネットワークのニーズを満たすように定義されましたが、現在ではそれがネットワークに限界をもたらしています。5GCアーキテクチャーのネットワークでこうした限界を克服する方法を次に示します。
アジリティと優れた運用効率を実現する新しいコアアーキテクチャー
新しい5GCアーキテクチャーを定義するために集まった通信業界の複数の専門家は、今日のみならず未来のニーズ、すなわちモバイルコミュニケーションをかつてないレベルに引き上げ、社会全体をデジタル化するというニーズに応える何かを創造するという課題に取り組みました。
この新しいアーキテクチャーは、ITネットワークの原則に則って構築されています。
展開の柔軟性と再利用性にかかわる5GCの重要な特長の一つは、それがクラウドネイティブ技術を使って構築され、各NFがマイクロサービスと呼ばれる小さなソフトウェアコードの組み合わせによって生成されていることです。一部のマイクロサービスは異なるNFで再利用できるので、より効果的な実装が可能であり、また独立したライフサイクル管理を容易に実現します。これにより、実行中のサービスに影響を与えずにアップグレードを行い、新しい機能を展開できます。
クラウドネイティブの設計原則の詳細については、クラウドネイティブ eBriefをダウンロードしてご覧ください。
新しいNFのプロビジョニングと統合は、従来の物理または仮想コアネットワークに比べて簡単に実行できます。通信事業者は、たとえば新しいネットワーク機能を導入するときに、ネットワーク統合に要する作業を最大で75%節減できます。
さらにクラウドネイティブな実装に基づくエンドツーエンドのプロセスのオーケストレーションと自動化も、NFのライフサイクル管理を大幅に簡素化します。
新しいネットワーク機能を追加し、きわめて迅速に導入し、容量を非常に素早く拡張し、システムの稼働中にソフトウェアアップグレードを実行できることで、新しいサービスを数時間で作成し展開できます。
ネットワーク機能の向上
新しい5GCアーキテクチャーにより、モバイルネットワークはより効率的で簡素なものになります。これは先に述べた先進的な5Gスタンドアローンサービスとどう関係するのでしょうか。
第一に、5GCは新しいサービスの市場投入時間を短縮し、より寿命が短いサービスを管理しやすくします。たとえば市場の需要を試験するための新しいサービスを、迅速に立ち上げることができます。サービスがうまくいかないときは、簡単かつ段階的に廃止できます。新しい先進的な5Gサービスはネットワークの複雑さを大幅に高める追加のネットワーク機能を必要するため、これらのサービスを実現する上でも簡素化された運用は重要な役割を果たします。5GCアーキテクチャーとクラウドネイティブ/マイクロサービスの実装により、運用コストを低く抑えながら、この複雑さを軽減できます。
それでは、先進的な5Gのユースケースを実現する鍵を握る新しい機能と改善された機能のいくつかについてご説明しましょう。
通信事業者は5GCを使うことで、企業顧客により優れたネットワークスライシングを提供し、またエンドツーエンドのSLA(Service Level Agreements)を提案できます。5GCおよびNR SAは、UE、RAN、コアのネットワーク全体で使われるエンドツーエンドのネットワークスライス識別子を導入し、ネットワークスライスの管理と構成を簡素化します。ネットワークスライシングのスケーラビリティも向上し、5Gデバイスは複数のスライスに同時に接続できます。新しいNSSF(Network Slice Selection Functions)を使うことで、一部のビジネス分野で重要な要件である、スライス間の切り分けと分離を改善できます。
5GCのエッジコンピューティングのサポートでは、ユーザープレーンの機能を分散し、エッジでトラフィックを分割し、分割されたトラフィックを動的に制御するための複数の新しい機能を提供します。遅延の削減、サービスの信頼性向上、トラフィックとサービスの分離は、エンドユーザーエクスペリエンスの全体的な向上に貢献します。
他にも多くの機能がありますが、以下にそのいくつかをご紹介します。
- 5GCに導入されたサービスエクスポージャー機能とトラフィックステアリング機能により、サービスを差別化するためのツールを提供
- 4Gネットワークよりも柔軟できめ細かく、PDUセッションごとに複数のサービス(QoSフロー)を可能にする拡張QoSモデル
- アプリケーションとネットワークユーザー向けに強化されたキー処理と統合認証モデルにより、エンドツーエンドの通信を保護するためのセキュリティが向上
- たとえばFWAサービスやその他のローカライズされたサービスへのアクセスを制御するのに有用な、地理的エリアごとのサービス差別化の強化
将来を見据えたネットワークアーキテクチャー
5GCとNR SAの将来は約束されているのでしょうか?考えてみましょう。
5GCとNR SAはモバイル業界が目標とするネットワークアーキテクチャーであり、3GPPの焦点もEPS(Evolved Packet System: LTE + EPC)から5GS(5G System: NR + 5GC)に完全に移行し、あらゆるイノベーションが生まれていきます。
この新しいアーキテクチャーは複数のバーティカルのニーズに対応し、通信事業者に新しいビジネスチャンスを開くための鍵を握っていることから、通信業界全体が5GCとNR SAへの進化に取り組んでいます。これらのバーティカルには製造業、自動車、プライベートでミッションクリティカルなネットワーク、有線アクセスが含まれています。
新しい5GSネットワークアーキテクチャーは、サービスのイノベーションのためのより広いエコシステムを実現します。標準化されたオープンなAPIを実装することで、開発コミュニティは、企業顧客向けの新しいサービスを構築する際にモバイルネットワークサービスを活用し、サービスの開発と実装を高速化する真にプログラム可能なネットワークを構築できます。
この技術は、近い将来の通信業界のニーズを充分支えられるほど未来的なものです。しかし何といっても素晴らしいのは、それが現在すでに利用可能であり、今後数年間でビジネスと社会を変えてゆくということでしょう。
まとめとして、5G NR SAをサポートする上での5GCの主な利点を要約した図を記載しました。通信事業者が競争力を維持し、市場で重要なプレーヤーとであり続けるために5GCを受け入れる必要がある理由がはっきりわかるものになっていれば幸いです。
では新しいクラウドネイティブ5GCソリューションを導入するためには、ネットワークに何が必要なのでしょうか?以下の動画では、エリクソンのパケットコアソリューション部門責任者のフォルケ・アンガー(Folke Anger)が、Light Readingのインタビュー中でこの質問に回答し、また通信事業者が新しい一連の運用手順に適応する上で、エリクソンが初期の5G展開の経験に基づいてどんな支援を提供できるかをご説明しています。
5G Coreの詳細はこちら。