優れたネットワーク性能は当たり前のことと思われがちですが、現在のパンデミックは、私たちの日常生活にとってのその重要性を示すことになりました。2020年6月版のエリクソンモビリティレポートでは、調査対象のネットワークユーザーの83%が、ロックダウンを乗り切るためにICTが役立ったと認めています。動画は会議、社交、娯楽といった面で多くの人にとっての救いとなりました。エリクソンはすでに現在の危機が始まる前の時点で、すべてのネットワークトラフィックの60%以上が動画関連であると見積もっています。パンデミックが早く終息することを願っていますが、それによって動画需要の増加に終わりが来るわけではありません。
エリクソンは、2025年の末までに、動画コンテンツがすべてのネットワークトラフィックの4 分の3以上を占めることになると予想しています。私たちの調査によると、動画中心のアプリが日常生活の一部になるにつれて、人々はネットワークに最高の性能を期待するようになってきており、また重要なことに、最適なユーザーエクスペリエンスのためにより多くの費用を支払ってもいいと考えています。以下ではエリクソンの革新的なEMCA(Ericsson Many-Core Architecture)が、現在と将来にユーザーが期待するネットワーク性能を提供しなくてはならない通信事業者にとっていかに役に立つかを説明します。
RANの処理能力ニーズの高まり
RANの処理能力は、5Gに移行する上で重要なリソースになります。RANの処理能力向上を牽引する要素は主に三つあります。
無線は、通信速度と全体的なネットワーク性能要求の増大に対応するために高度化が進んでおり、二つだったトランシーバが四つへ、さらに八つへと進化しています。これには5G Massive MIMO(64のトランシーバー及び大規模ビームフォーミング)も含まれます。
新しいユースケースに必要な容量に対応するため、4Gのローバンド20MHzに対して5Gではミッドバンドの100MHzとハイバンドの800MHzへと、帯域幅が大幅に増加しました。
TTI(Time Transmission Interval)要件(スケジューラーが動作して処理を実行する必要があるクリティカルループ)は、4Gローバンドの1msから、5Gではミッドバンドで0.5ms、ハイバンドで0.125msへと減少しています。これは、ゲームなどの、たとえばミッションクリティカルなアプリケーションのための超高信頼性・超低遅延のユースケースやモバイルブロードバンドのユースケースの強化など、複数の5Gユースケースのイネーブラーとなります。
品質は処理の課題
将来の最高のネットワーク性能を提供することは、処理上の困難な課題です。誰もが優れたユーザー体験を得られるようにするには、RANコンピュートハードウェアが、次の要件を満たす高度なアルゴリズムを実行できなくてはなりません。
- 多数のユーザーやデバイスを伴う
- 多数のサービス品質レベルを伴う
- 多数のネットワークスライスを伴う
- 多数のセルを伴う
- 多数のリソースブロックを伴う
- 多くのMIMOレイヤーを伴う
- 多くのアンテナブランチを伴う
そしてすべての処理をわずか0.0001秒以内に失敗することなく完了しなくてはならないのです!
EMCAエンジン
これは、優れたコンピューティング性能を必要とすしながら、電力効率を犠牲にしないという、非常に大きな処理上の課題です。エリクソンは、現在と将来のコンピューティングニーズに応えるソリューション設計を実現する独自の処理アーキテクチャーであるEMCAを開発することで、この課題に正面から取り組んでいます。
エリクソンは、数百の特殊化された信号プロセッサー(DSP)とアクセラレーターを搭載した専用設計のASIC(Application Specific Integrated Circuits)を使ってEMCAシステムをチップ(SoC)に実装します。SoCは、デジタルロジック、混合信号コンテンツ、プロセッサーを備えた高度なASICです。
半導体の機能を十分に活用できるように設計されているエリクソンのソフトウェアアーキテクチャーによって、EMCAは単なる複雑な集積回路を超えたコンピューティング・ソリューションとなっています。
EMCAが本質的に備えている並列処理能力は、Ericsson Radio Systemのすべての製品とソリューションを支えています。EMCAは統一されたアーキテクチャーとして、エリクソンのすべてのネットワークに(容量、サイズ、フォームファクターに関わらず)同じハードウェアとソフトウェアを実装するために使われ、最善のネットワーク性能と効率を保証しています。
EMCAを使ったRANコンピュート
EMCAはエリクソンの製品に比類ない性能を提供し、複数世代のハードウェア間の拡張性を実現します。EMCA上で実行されるエリクソンのRANコンピュートは、RANコンピューティングソリューションを実現しながら、大規模な並列処理により要求された時間枠内で重いRANアルゴリズムを走らせることができます。
EMCAはまた、RANの継続的なイノベーションも促進します。たとえばEMCAは、トランスポートネットワークの柔軟性と効率を高めることで、トランスポートネットワークに影響を与えることができます。EMCAは、RANの無線機またはベースバンドの任意の箇所に適用できることから、結果的にトランスポートのコストを最小限に抑えることができます。この非常に効果的なシリコンベースの処理ハードウェアがなければ、ネットワークの性能強化に貢献するエリクソンの革新的なソフトウェア機能はどれも実現できません。
EMCAは、その可能性を最大限に引き出すために、マーズ・キュリオシティ・ローバーの約4倍にもなる数百万行のコードからなる高度に洗練されたソフトウェアを備えており、常に周波数帯の効率的かつ安全な利用の限界を押し広げる高性能の無線通信を提供します。
以下ではEMCAが実現する革新的なソフトウェア機能を二つ紹介します。
エリクソンアップリンクブースター:5Gの縁の下の力持ち
ビデオ会議が急激に増えたことで、アップリンクのトラフィックが40%増加しました。舞台裏でアップリンク性能を高める5Gミッドバンド(サブ6GHz TDD)基地局ソリューションを開発したのはそのためで、これは必要な容量に対応する5Gの縁の下の力持ち的な存在になっています。
5Gアップリンクブースターと呼ばれるこの機能はEMCAの無線部分に実装され、セルエッジで強力な無線信号を確保することで広いカバレッジを提供します。またきわめて高い受信分解能と干渉の完全な排除を実現します。
これによりミッドバンドで10dBのカバレッジ利得を実現し、一切の妥協を排したエリクソンのアーキテクチャーによりアップリンクMIMOの性能を最大化します。
アップリンク性能が向上することで、ユーザーアプリのカバレッジはなんと90%向上し、セルエッジのアップリンク速度を最大で10 倍高めることができます。
なおEMCAとアップリンク・ブースターの併用は、Open RAN O-LLSインターフェースでは実現できないのでご注意ください。エリクソンはO-LLSとは異なる機能分割(Ericsson LLS)を採用しています。Ericsson LLSは無線側でより多くの処理を必要としますが、それはEMCAによって提供されます。
エリクソン:5Gを最も早く実現する方法
ESS(Ericsson Spectrum Sharing)は、LTEネットワーク全体に導入することで、ネットワークを5Gに迅速にスケールアップできるソフトウェアです。さらに事業者は同じ無線機、CPRIリンク、RANコンピュートベースバンドを使ってESSを起動できるので、コスト効率の高いソリューションとなっています。
同じハードウェアを再利用し、5Gにローバンド帯域を使うことで、より少ない数の局でネットワークを構築できるので、持続可能性の観点からも優れています。
ESSは、全国規模の5G展開の方法に変革をもたらし、可能な限り最速の方法で、あらゆる場所のすべての人々に最先端の接続を提供できます。
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イノベーションは私たちエリクソンのDNAです。エリクソンは、今日の課題に応えるのみならず、未来の課題に対応する備えがあるネットワーク技術を創生することが重要と信じています。だからこそエリクソンのネットワークは2015年から5G対応に備えており、またそれがEricsson Radio Systemのポートフォリオ全体で使われる統合アーキテクチャーであるEMCAを開発した背景でもあります。
つながる世界では、技術は急速に進化します。将来を見越した技術への徹底した取り組みによって、エリクソンの無線製品は今後も長い間効率的に動作し続け、通信事業者のネットワーク機器のライフサイクルを伸ばし、TCO(Total Cost of Ownerships)を削減します。
エリクソンが実現する長期的なネットワーク品質は、ビジネスの観点からも理にかなっています。市場シェアランキングから、ネットワークの性能が通信事業者の市場での評価に大きな影響を及ぼすことがわかっており、ネットワーク品質こそが、チャーンを減らしてARPU(Average Revenue Per User)を増やす鍵となっています。イノベーションで一歩先を歩み続けることで、お客様は市場の要求に先んじ、競合に対して差別化を図ることができます。
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