貴重な周波数帯資産の価値を最大化するカギを握る高性能無線機
2021年1月に米国FCC(Federal Communications Commission)がCバンドのオークションを開催したことで、通信事業者はミッドバンドの280MHzを獲得する機会を手にしました。その合計価格は800億米ドルを超え、これまでの米国の周波数帯オークションの最高額をはるかに超える驚くべき数字となりました。これは過去の最高額の実に2倍近くに相当します。
周波数帯の獲得は通信事業にとって生命線なので、事業者は巨額の投資を行います。これには主に二つの理由があります。
- 5Gが約束する超高速・低遅延の体験を実現するには広い帯域幅が必要となること
- 追加のスペクトルは、現在も未来も、トラフィックの増加に応えるための根本的なニーズであること。エリクソンモビリティレポートによると、アプリケーションの進化に伴って一層多くの人々がモバイルに移行するに従って、トラフィック量は2020年から2026年にかけて毎年24%増える見込みです。
無線技術によって、通信事業者が与えられた帯域で加入者を今より10%多く処理できるようになったとして、それがもたらす財政と効率上の利益を想像してみてください。これはRAN(Radio Access Network)機能や、無線機とRANコンピュートのベースバンドのインターワーキングにも関わる大きな挑戦です。しかし無線網上に構築されるあらゆるものは、基盤となる無線通信の性能を上回ることはできないので、すべては無線ありきの話であり、そして無線において最も重要なのはスペクトル効率です。
無線機分野の最先端を行くエリクソンの技術リーダーシップ
モバイルネットワークが登場した当初から現在に至るまで、技術面でのリーダーシップを重視してきたエリクソンは、優れた無線ソリューションを市場に投入すべく投資を続けています。2020年には、第二世代のデュアルバンドプラットフォームと第三世代のMassive MIMOプラットフォームを導入しました。後者はこれまでの世代と比較して2倍の帯域幅をサポートし、出力も50%向上しています。次のプラットフォームでも、ポートフォリオ全体でサイズ、重量、エネルギー消費量を削減しながら性能を向上させる予定です。ここでは例として、過去10年間の無線技術と自動車の進化を比較してみましょう。
2010年から2020年にかけて無線機の出力は4倍に増え、最大ダウンロード速度は約13倍速くなり、ビットあたりの伝送に要するエネルギーは80%減少しました。ここで無線機の出力を自動車の馬力に、最大ダウンロード速度を最高速度に、ビットあたりのエネルギー使用量を燃費に例えてみましょう。もし自動車が私たちの無線機と同じペースで進化していたら、平均的なファミリーカーは約520馬力、最高速度は時速6,000kmに達し、タンクが空になるまで最大4,500kmも走れることになります。
しかし出力と性能だけが重要な評価基準ではありません。多様なネットワークアーキテクチャーに対応し、一層小型化したフォームファクターと少ないエネルギー消費で性能を発揮し、将来を見越したESS(Ericsson Spectrum Sharing)や5G NR(New Radio)などの新しい技術革新をサポートする幅広いポートフォリオも重要な要素です。つまるところは、送信ギガバイトあたりの総所有コストの最小化がすべてです。ではエリクソンがそのために何をしているのかを見ていきましょう。
将来を見越したお客様第一の無線設計
「人生で唯一不変なものは変化である」としばしば言われますが、無線事業においてこの言葉は確かに真実です。新しい周波数帯が利用可能になり、通信事業者が合併したりネットワーク共有契約を結んだり、NB-IoT(Narrowband Internet of Things)や5Gなどの新しい技術が標準化されています。通信事業者による新しいサービス導入の選択肢と導入のペースは、多くの場合、自社で導入済みのハードウェアが新しい要件をサポートできるかどうかで決まります。しばしば何万という規模になり、無線機が鉄塔に設置されているケースも多い基地局に関しては、この状況次第で新しいサービスをいち早く市場投入できるか、または短期間で大幅な刷新プロジェクトの開始を強いられるか、という違いが生まれます。エリクソンは無線機の設計に際して、現在のみならず今後のニーズも考慮した上で、お客様が常に最前線に立てるようにすることを目指しています。私たちはこれを以下の行動により実現しています。
- 3GPP(3rd Generation Partnership Project)のような関連するすべての業界団体の主要メンバーとなり、積極的に参加する。これによって新しい技術仕様の策定時に、将来の技術について、たとえばASIC(Application Specific Integrated Circuits)やフィルターといった無線ハードウェア特性を策定できる。
- 運用帯域内の「あらゆる」構成をサポートできるようなアルゴリズム(線形化やクリッピングなど)の設計
- RANコンピュートのベースバンドと無線全体に機能を最適に展開できる、エンドツーエンドのソリューションの提供
この設計理念によって、お客様は将来へ備えることができます。以下に三つの実例をあげます。
- 2015年以降のすべてのERS(Ericsson Radio System)の無線機は、5G NRとESS(Ericsson Spectrum Sharing)に対応した設計となっている。
- 2011年以降のすべてのFDD(Frequency Division Duplex)無線機は、NB-IoT対応機能を備えている。
- 無線とRANコンピュートのアルゴリズムの両方を微調整し、ソフトウェアアップグレードによって、展開済みの無線機の運用における省電力モードを有効化できる。
エリクソンの広範な無線ポートフォリオは将来を見据えて構築されています。
無線機のサイズと重量を増やさずに帯域と出力を向上
エリクソンのお客様は、しばしば既存のスペース内でこれまで以上の帯域をサポートすることを望みます。つまり無線機のサイズは大きくせずに性能と効率を改善する必要があるのです。これが何を意味するのか、いくつか例を見てみましょう。
同一ユニットで、複数の周波数帯からなるより広い周波数帯を管理しなければなりません。帯域が増えると、セルサイズとカバレッジを維持するためにより多くの出力が必要になります。このため追加のパワーアンプ、冷却装置、電力供給の必要性が生じます。しかし従来のハードウェア設計ではコンポーネントを使用可能な既存のスペースに物理的に収容できないため、これらの追加要件を満たせません。
そのためエリクソンは無線設計を再検討し、非常に高いレベルでハードウェアを統合しました。これは偉大なハードウェアイノベーターであるアップルが、新しいMacBook製品向けのM1 SoC(System on a Chip)で行ったことに似ています。アップルはエリクソンと同様の設計原則に基づいてコンポーネントを緊密に統合して性能を高め、エネルギー効率の大幅な向上を実現し、それを見事に既存のラップトップ製品のフォームファクターに収めました。エリクソンの無線機でもより緊密な統合を実現し、複数のコンポーネントを、ハードウェア、制御インタフェース、ソフトウェア(ファームウェア)を含む単一の新しい物理コンポーネントに置き換えました。これによって複雑性が軽減され、構成と保守の独立性が高まりました。
この統合を重視した設計理念の例として、以下があげられます。
- エリクソンのパワーアンプ担当のエンジニアが、複数のディスクリートブロックを一つのパッケージに統合することで、所定のスペースに収容可能で、より多くの電力と帯域幅を処理できる新しいソリューションを設計した。
- これは低レベルの無線周波数や信号処理にも当てはまり、最新の半導体処理技術を活用してその一部をデジタル領域に移行した。
これを実行するには、新しい技術と革新的な機能をソリューションに取り入れる必要があります。緊密な統合によって電力散逸の密度が増えるため、私たちは新しい堅牢な設計と、過酷な条件に耐えうる革新的な冷却ソリューションと管理機能を開発しました。より優れたソリューションを見つけるためにサプライヤーと積極的に連携し、調達できないものは自社開発しています。
さらにエリクソンのソリューションは、ビームフォーミングや干渉抑制などの新しい高度な機能により、RANコンピュートと無線機のより緊密な統合の恩恵を受けています。RANコンピュートのいくつかの機能を無線機側に移すことでRANトランスポート要件を削減できるため、無線機は絶え間なく変化する無線チャネルの状態により迅速に対応できます。これにより、性能、省サイズ化、エネルギー効率が大幅に向上します。
RANコンピュートと無線機共同のシステム化と設計は、エリクソンが今後、高性能のソリューションを小型で魅力的なパッケージで実現するために進むべき道です。
Ericsson Siliconが実現する機能性と性能
より広い帯域幅の搬送波、複数のバンド、より多くのアンテナブランチにより、無線機にはさらなる処理能力と機能性の向上が求められます。線形化やクリッピング、パッシブ相互変調のキャンセルなど、無線の近くで実行されるアルゴリズムの複雑化はさらに進みます。またアンテナブランチの増加とMassive MIMOへの移行に伴って、ビームフォーミング関係の機能の重要性が高まります。
機能と処理能力向上のニーズが高まり続ける中、これに効率的に応える手段として、エリクソンはテーラーメイドのSoCであるEricsson Siliconを採用しました。Ericsson Siliconは、ERSの中核をなすものです。Ericsson Siliconによって、現在から将来にわたる幅広い展開シナリオに対応する、高性能でエネルギー効率に優れた軽量の製品を生み出すことができるのです。
FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などの他のチップセット技術に勝るSoCのメリットは、より高性能で、サイズ、重量、エネルギー消費、コストを最適化できる点です。これは通信事業者であるエリクソンのお客様にとってきわめて重要な要素です。
Ericsson Siliconが実現する機能の一つに、以前のブログ記事で取り上げた、比類ないユーザー性能とより大きなカバレッジを提供するエリクソンアップリンクブースターがあります。エリクソンのMassive MIMO無線機独自のこの機能は、Ericsson Siliconの強力な計算能力なくして実現不可能です。事実エリクソンは、使用ワットおよび1秒あたりのRANソフトウェア命令処理能力において業界をリードしています。これはエネルギー消費を削減しながら、高い計算能力が求められる5G機能を提供するために不可欠な要素です。
未来の無線技術を今提供する
エリクソンは現在、世界で79の5Gライブネットワークを提供しています。エリクソンモビリティレポートは、5G加入が5年後に35億件に達すると予想していますが、エリクソンは世界クラスの接続性でこれらのネットワークを拡大する準備ができています。私たちは、市場で最も強力な無線ポートフォリオでこれに対応します。
- エリクソンの広範なソリューションポートフォリオは、すべての通信事業者のあらゆるサイトに最適なソリューションを提供可能
- エリクソンの革新的な統合設計によって、性能と効率を損なうことなく、画期的な技術を適合するフォームファクターに搭載可能
- Ericsson Siliconは、業界をリードする計算性能で5Gユースケースの可能性を引き出す
私たちがこのようなソリューションを市場に投入できるのは、技術への多大な投資と、2G、3G、4G、5Gの3GPP標準に60,000件以上の寄稿を行い54,000件を超える特許を取得してきたエンジニアや研究者の努力によるものです。2016年から2020年までの5G NR開発期間において、エリクソンはその技術仕様に最大の影響を与えてきました。仕様文書の実に37%がエリクソンとの共同執筆によるもので、これは他社の貢献のほぼ2倍にあたります。
エリクソンは、卓越した無線システム構築に何が必要かを熟知しています。
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