AIによるインテントドリブンのサービスのオーケストレーションとアシュアランスの強化
インテントドリブンのサービスオーケストレーションとAIの相乗効果により、ネットワークとサービスの管理方法が変わりつつあります。これはOSSによるサービス管理にどのような革命をもたらすのでしょうか。自動化とプログラマブルネットワークの可能性を最大限に引き出すにはどうすればよいのでしょう。
*本ブログは2024年11月28日投稿の英語版の抄訳です。
AIと自動化によりサービスオーケストレーションを変革する
インテントドリブンなサービスオーケストレーションとアシュアランスは、サービス管理とオーケストレーションの次のフロンティアです。サービスは、プロビジョニングされ起動されるのみならず、ダイナミックなビジネス、サービス、運用目標に合わせて継続的に監視および調整されます。AI(Artificial Intelligence)は意思決定、予測分析、クローズドループ操作を自動化し、サービスインスタンスを定義されたインテントに一致させることで、サービス管理とオーケストレーションプロセスの強化に革新的な役割を果たすことができます。

Figure 1: The role of AI in service management and orchestration
図1: サービス管理とオーケストレーションにおけるAIの役割
CSP(Communication Service Providers)がサービス自動化を実装する際に直面する大きな課題の一つは、エンドツーエンドのサービスブループリントの設計、分解、エンドツーエンドの顧客とリソース向けサービスインスタンスのアシュアランスに伴う複雑さです。私たちの経験では、サービス管理とオーケストレーションのメリットを十分に引き出すには、サービスブループリント、分解および統合ロジック、マスター/アトミックワークフローなど、さまざまなソフトウェアアーティファクトを使ってシステムを構成する必要があります。オーケストレーションプロジェクトを提供するには、これらの成果物の設計と試験に多大な労力が必要です。
CSPは、サービスのオーケストレーションとアシュアランスの運用をより効果的に実装する方法を模索しています。OSSシステムの構成や統合ではなく、自動化プロセスの管理にシフトすることで、より効率的で合理的なサービス運用が可能になります。AI対応のインテントドリブンで自律的な運用のサポートに向けてサービス管理を進化させることは、TM Forum(Tele Management Forum)で定義され最近公開された自律ネットワーク技術アーキテクチャーで説明されている自律ネットワークのビジョンの基盤となります。
AIを活用したインテントドリブンの自律的サービス運用を実現するものは何か
TM Forumのプログラマブルネットワークのビジョンの中核となるのは、インテントドリブンのサービスオーケストレーションです。CSPはこれによりハイレベルの事業インテントとサービスインテントを定義し、それらを特定のネットワーク構成とアクションに自動的に転換できます。ネットワークサービスインスタンスが運用を通じて定義されたインテントを継続的に満たすようにするためのサービスアシュアランスも、同様にきわめて重要です。
サービスの設計とプロビジョニングからサービスの可観測性確保と保証に至る完全に自動化されたサービスライフサイクルを実現するには、AIを活用したインテ
ントドリブンで自律的なサービス運用の実装が必要であり、それはAI対応のサービスオーケストレーションシステムの機能を活用することで実現できます。

Figure 2: AI enables intent-driven operations | Source: Ericsson
図2: AIによるインテントドリブンな運用の実現 |ソース: エリクソン
ここで興味深いのは、サービスのブループリント設計からエンドツーエンドのサービスインスタンスの運用とアシュアランスにいたる、サービスインスタンスのライフサイクル管理のためのインテントドリブンのサービスオーケストレーションを通じて、自律的なサービス運用を可能にするという、AIが秘めた可能性です。
AIによりサービスブループリント設計のリードタイムを短縮し、革新的なサービスをより迅速かつ効果的に提供
AIおよびML(Machine Learning)テクノロジーは、インテントドリブンのサービスオーケストレーションとアシュアランスのために、サービスオーケストレーション設計者とネットワーク設計者の作業を大幅に簡素化できます。たとえばAIは、カスタムトレーニング済みのLLM(Large Language Model)を使って、当初のサービスオーケストレーションのブループリントの生成と検証を実現できます。このプロセスでは履歴データ、過去のブループリントの反復、ネットワーク構成、特定のサービス要件を活用します。パターン認識や予測モデリングなどのML技術を利用して、革新的で機能的なサービスのブループリントを生成します。
サービスブループリントが生成されれば、AIツールは、実際のサービス実装の仮想レプリカであるデジタルツインを使い、その展開をシミュレートできるようになります。このシミュレーションは、サービスインスタンスの性能を予測し、ライブネットワークに実際に展開する前に潜在的な問題を特定するために役立ちます。さらにAIシステムは、ブループリントが既存のネットワーク標準、運用プロトコル、ベストプラクティスに準拠していることを確認し、教師なし学習技術を活用することで、確立されたモデルからの逸脱を検出できます。

Figure 3: AI-enabled service blueprint design | Source: Ericsson
図3: AIを活用したサービスのブループリント設計 |ソース: エリクソン
サービスブループリントの設計プロセスを自動化することで、新しいサービスブループリントの設計、検証、オンボーディングに必要な時間を大幅に短縮し、サービスの市場投入時間を短縮し、運用効率を向上させることができます。エリクソンはすでにAI機能を活用してサービスブループリントの設計と検証を行っています。AIの活用により、サービスブループリントの設計と試験の時間が大幅に短縮されるのみならず、新しい高度なサービスオーケストレーションとアシュアランスのユースケースの導入も促進されます。
インテントベースのE2Eのサービスオーケストレーションから完全に自律的なネットワークへの進化
サービスを実装する方法ではなく、達成しなくてはならない内容にフォーカスするインテントベースのエンドツーエンドのサービスオーケストレーションは、自律的なネットワーク管理に移行するための基盤です。AIはこのパラダイムを実現する上で重要な役割を果たします。AIアルゴリズムは定義されたインテントを解釈し、それを達成するための基盤となるネットワークリソースを自動的に管理し、ネットワークが新しい要求にリアルタイムで適応できるようにし、データから学習して性能を継続的に最適化し、ネットワークの異常や障害に対応して自ら修正できるからです。サービスのオーケストレーションとプロビジョニングに革命を起こすAIの可能性について、さらに深く掘り下げてみましょう。
最初の重要なポイントは、AIがインテント(ハイレベルの事業目標またはサービス目標)を解釈し、それらを実行可能なオーケストレーションアクションに転換することで、サービスオーケストレーションを強化できることです。CSPが高度なNLP(Natural Language Processing)技術をサービスオーケストレーションスタックに組み込むことで、システムは自然言語で表現されたサービス要件を解釈し、ユーザーコマンドまたはサービスリクエストから意味のあるインテント情報を抽出し、それらを実行可能な標準ベースのAPI呼び出しに変換することができます。
AIモデルはセマンティック分析を通じてこれらの要件のコンテキストとセマンティクスを分析し、サービスインスタンスやネットワークの現在の状態などの要素を考慮して、インテントが正確に解釈され、満足されているかを確認します。

Figure 4: Facilitate zero touch service orchestration with NLP translation | Source: Ericsson
図4:NLP翻訳によるゼロタッチサービスオーケストレーションの促進 |ソース: エリクソン
APIを使ったコグニティブなインテントのライフサイクル管理
もう一つの重要なポイントは、APIを通じてインテントを定義、管理、監視するコグニティブなインテントのライフサイクル管理です。ここでのAIの役割は、トリガーとコンテキスト情報を解釈して提案を生成し、クローズドループの決定を導くことです。AI/MLは選択肢を即時に分析し、ターゲットとなるサービスの最適なグラフと構成を提案することで、動的なサービス設計と展開に貢献できます。

Figure 5: Cognitive close loop for intent-based autonomous networks | Source: Ericsson
図5:インテントベースの自律ネットワークのためのコグニティブなクローズドループ |ソース: エリクソン
コグニティブなインテントライフサイクル管理は、本来人間の介入を要する多くの意思決定を自動化し、他のタスクのためにリソースを解放し、より効率的なサービス運用を確保します。このアプローチでさらに重要なのは、AIとMLシステムが過去の決定の結果をモニターし、フィードバックから学習してインテントの解釈を洗練させて将来のサービス設計の決定を強化することで、継続的な改善を促進することです。
AIを活用したサービスアシュアランスによるサービスの信頼性向上
エンドツーエンドのサービスインスタンスが適切に設定され起動されたら、その状態と性能が、サービスレベルKPI(Key Performance Indicators)のセットとして設計され事前定義されたサービスインテントと一致していることを確認するため
は、ネットワークテレメトリーデータを取り込み、それをサービスレベルのKPIに集約し、設定されたしきい値を監視して、サービスインテントからの逸脱への能動的および受動的対応を実現します。
問題が発生する前にそれを特定して対処する
サービスインテントからの逸脱を能動的に検出する例を挙げると、サービスアシュアランスはAI/MLを活用してトラフィック履歴を分析し、履歴データとリアルタイムテレメトリーにMLモデルとトラフィックパターンを適用することで、潜在的なサービス低下、「サイレント」障害、容量上の問題を、それらが発生する前に予測できます。ネットワーク事業者はこの方法でサービスの停止や性能問題を回避するための予防措置を講じることができるので、予測分析はリスクを早期に特定することでサービス性能を維持するのに役立つと言えるでしょう。将来の問題や潜在する異常を予測するAIの能力が、ネットワークサービスとリソースの能動的な最適化を進める主な動機になっています。

Figure 6: AI-enabled service assurance | Source: Ericsson
図6:AIを活用したサービスアシュアランス |ソース: エリクソン
またデータを即時に解釈するAIの力により、異常が検出されたときの意思決定と復旧を効率化できます。AIは、事前定義された静的なポリシーに頼らずに異常を特定できるのみならず、サービスオーケストレーションがループを閉じるために実行できる復旧や推奨や決定を提示することもできます。AIの推奨は、コアネットワーク機能のスケールアップなどの単純なサービスやリソーストポロジーの変更から、サービスインスタンストポロジーの設計に影響する可能性を伴う複雑な変更まで、多岐にわたります。
AIは完全にプログラマブルなネットワークの実現に向けた決定的な一歩
インテントドリブンのサービスのオーケストレーションとアシュアランスにおけるAI技術の統合は、プログラマブルネットワークに向けて進むためにきわめ
て重要です。AIはブループリントの生成、検証、ネットワーク展開を処理することで、サービスブループリントの設計プロセスの自動化を簡素化する可能性を秘めています。パターン認識や予測モデリングなどのML手法を使ってネットワークとサービスの需要を予測し、それに応じてサービストポロジーのグラフと構成を最適化します。MLアルゴリズムは、ネットワーク性能データから継続的に学習することにより、重要なサービスおよびネットワーク運用を継続的に適応させ最適化することに貢献します。これは変化する条件に自律的に適応しなくてはならないプログラマブルなネットワークにとって決定的に重要です。
またAIドリブンのソリューションは、リアルタイムのサービス監視とアシュアランスを可能にし、事前に定義されたインテントとKPIに設定されたパラメーターの範囲内にサービス運用を維持します。この絶え間ない監視と自動調整は、プログラマブルなネットワークのシームレスな運用を維持するために不可欠です。
AIとMLはこれらの機能によってサービス管理に伴う複雑さを軽減し、より適応性と効率に優れ、自己管理が可能なネットワークへの道を開きます。
エリクソンのインテントドリブンの自律型ネットワーク実現への取り組みについて、くわしくはこちらをご覧ください。
- 記事:Evolving service management toward intent-driven autonomous networks
- レポート: Closing the loop: CSPs Aim to Automate Service Orchestration and Assurance
- ブログ記事: Model-driven configuration management for multi-domain service orchestration
参考資料 ·
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