日本はテクノロジーの岐路に立っている。国内の通信事業者は5Gを早期に導入し、デジタル経済を推進する重要な打ち手として新しいモバイル技術を採用した。 しかしその一方で5Gネットワークの基地局展開は4Gと比べて少なく、Ooklaの最新のスピードテスト・グローバル・インデックスによれば日本は中位にとどまっている。これは日本の国際競争力への懸念に繋がる。
現在、日本は5Gを次のレベルに引き上げる好機を迎えており、そのニーズは高まっている。日本経済の成長を確かなものにするには、企業や政府が差別化されたモバイル接続を活用し、AIとクラウドを大規模にサポートする必要がある。たとえば差別化されたプログラマブルな高性能5Gネットワークは、GDPの20%を占める日本の製造業の競争力を高めるはずだ。
差別化されたモバイル接続は、脱炭素化目標の達成や、新たな公共安全機能の開発、公共サービスの変革に不可欠な役割を果たす。また、新規投資の誘致や人口減少対策による過疎地の活性化にとっても重要である。
デジタル化は世界的なトレンドとなり競争でもある。競争には勝者と敗者が生まれる。日本が重要な経済・安全保障パートナーに後れを取ることなく競争力を向上させていくには、最高の品質と性能のモバイルネットワークを維持し、活用する必要がある。
なぜ日本では5GスタンドアローンとMassive MIMOが重要なのか
4Gネットワークのベストエフォート接続は革新的なアプリ経済を築き上げ、ほとんどの消費者にとってはそれで十分だった。しかし企業や政府には、差別化されたサービスを提供する高性能でプログラマブルなネットワークを要する、より要件が厳しい特定のニーズがある。こうした顧客をサポートするネットワークは、高い障害耐性とエネルギー効率を備えることに加え、可用性、信頼性、速度の面で優れたユーザー体験を確保できるものでなくてはならない。
世界中の通信事業者はこれを実現するために、タイムスロットでアップリンクとダウンリンクのデータ伝送を交互に行うミッドバンドTDDを使った革新的な5G SAネットワークを展開している。5G SAは、サービスに対応した5Gコアを使って既存の4Gインフラから独立して運用されるので、通信事業者は新しい高度な機能を提供できる。
一方で日本の事業者を含む多くの通信事業者が、5G SAネットワークを立ち上げてはいるものの、大規模な導入の促進には課題を抱えている。これにはネットワークのカバレッジと密度の拡大、ネットワークの広範な利用を促す価値提供型ビジネスモデルの構築が含まれる。
Massive MIMOは、特に日本において、5Gネットワークのネットワーク品質の維持・向上のための重要なテクノロジーとなる。Massive MIMOは複数のマルチアンテナ技術で構成されており、エネルギーを節約しながら5Gネットワークの容量と性能を向上させる。Ericsson Siliconをベースにしたこの技術は、基地局で多数のアンテナを使ってより多くのデータを同時に送受信する。
Massive MIMOは、東京や大阪などの人口密度の高い地域や主要道路沿いでのユーザー体験を向上させるのみならず、最新のデバイスを使い高性能を求めるテクノロジーに精通した消費者の体験を向上させる。
5Gにおけるネットワークスライシングの可能性を探る
ネットワークスライシングと差別化された接続性は、インフラの収益化を可能にする5G SAネットワークの基本的な機能である。ネットワークスライスとは、さまざまなサービスに対応する安全でカスタマイズ可能なネットワークセグメントと言える。スライスはたとえば特定の種類のIoT展開の低遅延性と高信頼性を確保する一方で、遅延が大きくとも大規模なIoTアプリケーションを提供したりする場合がある。特定のユーザー専用にしたり多数のユーザー間で共有したりすることも可能で、公共向けのユースケースとしては、リモートブロードキャストやモバイルクラウドゲームなどが考えられる。たとえばコンサートでは、物販を行う販売業者や写真や動画をアップロードするファンの接続性を保証することができる。
世界のエンタープライズ企業は、全面的に自動化された運用プロセスを、高いセキュリティで迅速に提供することを求めている。通信事業者はネットワークスライシングにより、4Gネットワークでは不可能な方法でこれらの企業の要求を満たすことができる。
たとえばシンガポールのSingtelは2022年のシンガポールグランプリにおいて、ファンの体験を向上させるネットワークスライシングの概念実証を開発した。その後はシンガポールの独立
記念日パレードなどのイベントにも拡大し、消費者とセキュリティ責任者双方のニーズを満たす接続性を提供した。現在Singtelはそのスライス機能の商用化に取り組んでいる。
日本にとってプラスになるグローバルなイノベーションを意味するグローバルなスケール
180ヶ国で事業を展開しているエリクソンは、お客様やパートナーと共に常に学び続け、5Gのフロントランナーとも協力している。たとえばインドは5Gを急速なデジタルトランスフォーメーションの中心に据えているが、エリクソンは同国の通信事業者が驚異的なペースで5Gを展開するのを支援してきた。
日本では、エリクソンのグローバルな専門知識とローカルで培った深い知見を組み合わせることができる。だからこそ私たちは、日本の通信事業者によるネットワークの収益化をお手伝いするのみならず、日本の企業や政府が目指す野心的なデジタル化を支援するのにふさわしい独自の立ち位置にあると自負している。
エリクソンはオープンRAN事業化計画の一環として協業も強化している。たとえば米国では、2026年後半までに無線ネットワークトラフィックの70%をオープンRANアーキテクチャーに移行することを目指すAT&Tの主要なパートナーとして、他の戦略的パートナーと共にこの取り組みを主導し、目標の達成を支援していく。
日本はエリクソンにとって最も重要な国の一つだ。エリクソンは、国内に1,000人以上の従業員を擁し、日本での40年の歴史を通じて、国内の大手通信事業者から信頼されるサプライヤーであり続けてきた。この地での研究開発も拡大しており、6G研究については横浜国立大学及び電気通信大学と協力している。
日本には5Gネットワークにおけるフロントランナーの精神を持ってほしい。そして、エリクソンは日本のデジタルの未来に不可欠なパートナーでありたいと考えている。私たちには、21世紀に日本がテクノロジーと産業全体で主導的な役割を果たし続けるための次のレベルのネットワークを、日本のお客様と共に構築する用意がある。
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Massive MIMO, preferred option for large scale 5G - Ericsson
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エリクソンCEO: モバイル通信はいかにしてテクノロジーの次のイノベーションの波を起こすのか