私たちは今、AI、クラウド、モバイル技術の融合が生む戦略的な転換点に立っています。5Gは史上最も急速に成長しているネットワーク技術です。その一方でAIは爆発的な成長を続けながら、データセンターによる中央集権型モデルから、私たちのデバイス・車両・都市に組み込まれ、5Gで接続された分散型の自律エージェントへと急速に移行しています。
こうした新しいAIシステムは、これまでとは異なる動き方をします。絶えず相互にやり取りし、協調しながら学習し、マシンの時間軸で行動します。その潜在能力を最大限に引き出すためには、ネットワーク・クラウド・数十億台のデバイスやセンサー・数億の家庭や企業をつなぐ、まったく新しい種類の無線インフラが必要です。私はこれを「6G/AIインテリジェントファブリック」と呼んでいます。これは、異なるAIシステムが場所や開発元を問わず、安全かつ安定したパフォーマンスで連携できるよう設計された普遍的なフレームワークであり、あらゆる場所でAIのために最善を尽くすネットワークです。
このファブリックが実現するのは、機械から都市全体に至るまでを精密に仮想化した大規模なデジタルツインです。企業は現実世界で実行する前に、複雑なタスクをライブシミュレーションで検証できるようになります。また、このファブリックは、リアルタイムの言語翻訳や不正検出などのサービスを世界中の数十億の消費者に提供します。ミッションクリティカルな用途では、サービス契約によって品質を保証した超高信頼性の接続を、緊急対応の現場に提供します。このファブリック全体をつなぐ共通の糸こそが、高度なコネクティビティです。強力な5Gネットワークとクラウド・エッジコンピューティング、完全なネットワーク自律性、健全なデータガバナンスを組み合わせることで、リアルタイムで感知・予測・行動できるインフラを構築します。
5G SAからAIネイティブの6Gへ
今日の高度な5Gネットワークは、高速なアップロード速度と、オープンAPIを通じて提供されるネットワークサービスを備えています。開発者はこれを活用してネットワークをプログラマブルにし、グローバルなアプリケーションから手軽に利用できる環境を構築できます。これが出発点です。
ネットワークをあらゆる場所で機能する真のファブリックにするためには、特に最新のクラウドネイティブ5G SA(Standalone)技術による包括的な5Gカバレッジが必要です。5G SAにはAIベースの自律機能が標準で組み込まれており、事業の成長と運用効率化を支えるとともに、AIトラフィックへの対応も今日から可能です。つまり通信事業者にとってのAI活用機会は、6Gへの移行を待つことなく、すでに到来しています。
5G SAネットワークの柔軟でプログラマブルな設計により、通信事業者は稼働中のサービスに影響を与えることなく、新サービスを数週間ではなく数時間でアップグレード・開発・展開できます。ネットワークエクスポージャー(開発者向けにネットワークサービスを公開する仕組み)、ネットワークスライシング(特定の用途向けに専用の仮想ネットワークを構築する機能)、エッジコンピューティングといった機能と組み合わせることで、5G SAはサービス提供の新たな基準を打ち立てています。企業向けには、保証されたサービス品質を備えた差別化された接続性を、オンプレミス(自社拠点)またはサービス形式で提供します。
分散型エージェントワークフローを持つAIアプリケーション、産業用AIツール、フィジカルAIの普及が進むにつれ、より高度なネットワークへの需要が高まり、6Gへの移行は自然な流れとなるでしょう。
6Gの時代になると、世界中のあらゆるアプリケーション、企業、政府のニーズが、それぞれに最適化されたネットワーク機能と分散型コンピューティングによってリアルタイムで満たされます。コスト効率が高く低遅延なAI推論の重要性が飛躍的に高まる中で、高度な接続性を提供するネットワークの役割は今後ますます大きくなります。6Gネットワークはアップリンク性能を10倍に強化し、スペクトラムと帯域幅の柔軟性を大幅に向上させます。これは将来のAIおよびARデバイスにとって不可欠な要件です。加えて、スペクトル効率とエネルギー効率も大幅に改善されます。
さらに6Gでは、ISAC(Integrated Sensing and Communication)のような、ネットワーク全体のスケールでパラダイムシフトをもたらす機能が登場します。ISACは、通信ネットワークに接続されていないパッシブなオブジェクトのセンシングと空間的な位置把握をモバイル通信ネットワークに統合することで、通信にとどまらないネットワークの機能拡張を実現します。これにより、ネットワークは単に「つなぐ」役割を超えて物理世界そのものを体現し、大規模な空間インテリジェンスを可能にします。そして、私たちがまだ想像し始めたばかりの、まったく新しいユースケースへの扉が開かれます。
その影響は広範に及びます。都市インフラはリアルタイムの環境把握によって強化され、重要インフラには継続的なモニタリングがもたらされます。産業用自動化システムでは、ロボティクス・物流・安全管理システムに新たなセンサー入力が加わる可能性があります。消費者向けの用途としては、転倒検知、車両追跡、ドローン管理などが考えられます。
オープンかつセキュアに設計されたアーキテクチャー
オープンなクラウドネイティブおよびAIネイティブの原則に基づいて構築することで相互運用性が確保され、AIネイティブのシステムは既存のクラウドネイティブネットワークに新たな機能を加えながら進化していけます。成功を測る基準となるのは、実証されたパフォーマンス・総所有コスト・エネルギー効率といった、現実の成果です。そして何よりも、信頼性とオープン性を土台とした設計が不可欠です。
だからこそ、オープンで相互運用可能なアーキテクチャーが欠かせません。エリクソンの戦略は、ハードウェアから切り離されたクラウドネイティブのネットワークソフトウェアを設計することです。これにより顧客は、CPU・GPU・RANやAI推論向けの専用ハードウェアなど、特定用途向けおよび汎用のプロセッサーを自由に組み合わせることができ、ベンダーロックインを心配することなくイノベーションに取り組めます。
エリクソンがAI-RANアライアンスの創設メンバーであることは、5G RANの段階からAIがいかに重要であるかを示すとともに、業界パートナーとともに新たなビジネス成果を生み出すためのオープンインターフェースの構築に取り組むという姿勢の表れです。また、Linux FoundationのAgentic AI Foundationの創設メンバーとして、自律型AIエージェントがベンダー・業界・国境の垣根を越えて安全に相互運用できる環境づくりに貢献していきます。
同様に重要なのが、ネットワーク設計においてセキュリティを最優先とすることです。安全でレジリエント、かつプライバシーを保護するネットワークプラットフォームは、社会・ミッション・ビジネスのいずれにおいても最も厳しい要件を持つユースケースを、実証済みのパフォーマンスで支える基盤です。そのためには、すべての展開モデルと製品ライフサイクルの各フェーズにわたって、セキュリティ自動化と保証機能を備えたゼロトラストアーキテクチャーが求められます。
セキュリティメカニズムの強化とAIベースのセキュリティおよび信頼管理により、既知の脅威と未知の脅威の両方にリアルタイムで対処することが可能になります。6G/AIインテリジェントファブリックは、信頼できるパートナーが提供する検証済みの安全なハードウェアとソフトウェアで構築されなければなりません。それによって初めて、企業や政府は必要な信頼性と制御を手にすることができます。
コラボレーションで次の波を切り拓く
将来の6G/AIインテリジェントファブリックは国家の重要インフラとなるものであり、価値観を共有する信頼できる国々とその産業界が協力しながら開発を進めるべきです。目指すのは、5G/6G・クラウド・半導体・AIにわたる相互運用可能な技術スタックの構築です。これには通信、クラウド、AI間の分野の垣根を超えた幅広い協力と、デバイスメーカー、アプリケーションサービス事業者、政府、学界などの関係者の参加が求められます。
6GとAIを中心とした次のイノベーションの波を定義し、その先頭に立つ今、私たちにはこの基盤を正しい形で構築する責任があります。オープンで安全、そしてインテリジェントな未来の設計と展開に、ぜひパートナーの皆さんとともに取り組んでいきたいと考えています。