ボリエ・エクホルム: 欧州の政策立案者は規制よりイノベーションを優先すべき
本資料は2024年3月27日に発表された報道資料の抄訳です。
エリクソン社長兼CEOボリエ・エクホルム(Börje Ekholm)は、欧州が次世代テクノロジーのサクセスストーリーに取り残されないためには、欧州のデジタルインフラを強化し、通信業界の成長を可能にし、地域の競争力を高めるための取り組みが必要だと警鐘を鳴らしています。
エストニアのタリンで開催された北欧投資銀行(Nordic Investment Bank [NIB])の理事会でセミナーに登壇したエクホルムは、イノベーションより通信規制を優先する傾向が続いていることが、欧州のCSP(Communications Service Provider)市場の細分化と相まって、中国、米国、インドなどの地域と同じスピード感で新しいデジタル技術や経済を受け入れる能力を阻害していると述べました。
エクホルムは、現在の欧州のCSPの大半が資本コストを賄うだけの利益を上げていないことを背景に、欧州がこれまでのやり方を続けると、最終的には素晴らしい芸術作品はあっても主要産業、世界レベルのデジタル技術、イノベーション、産業面のリーダーシップに欠ける博物館と化してしまうかもしれないと、警鐘を鳴らしています。
AI(Artificial Intelligence)のイノベーションを例に挙げ、米国と中国によるAIへの投資が80%を超えているのに対し、EUはこれまでにわずか4%にとどまっていると述べました。
エクホルムは、米国と中国が4Gのデジタルネットワークインフラの能力を活用することを可能にしたのは、デジタル化を受け入れるオープンな姿勢にあると述べています。結果として世界の売上高トップ500企業のリストであるFortune 500に名を連ねる多くの新企業が誕生し、リストに入っている欧州の企業は減っています。
エクホルムによると、欧州のデジタルインフラへの平均投資額は、現時点で米国の半分以下です。
エクホルムは言います。「私たちはこれを真剣に受け止める必要があります。テクノロジーの破壊的な進化(disruption)は新しい市場の現実を生み出し、競争関係を変化させます。重要なのは再発明し革新する能力です」
エクホルムはまた欧州の通信市場における細分化についても言及し、CSPは米国、中国、インドなどの市場と比べて競争上不利な立場にあると述べました。
「事業者にとって規模は重要ですが、欧州の事業者は規模が不十分です」とエクホルムは言います。「欧州の通信事業者1社あたりの平均加入者数は440万人ですが、米国では9,500万人、インドでは3億人、中国では4億人です。欧州は単純に市場内の統合が必要です」
テクノロジーのリーダーシップで競争するためには、欧州は規制よりもイノベーションを優先しなければならないとエクホルムは言います。
エクホルムはこう述べています。「これは雇用を創出し、経済的繁栄を達成する欧州の能力に関わることです。デジタル化は加速する一方です。ユビキタスで高性能なデジタルインフラの構築は、欧州の将来の競争力、技術面のリーダーシップ、野心的な脱炭素化のカギを握っています。欧州の政策立案者は、これを実現する上で重要な役割を担っているのです」
エクホルムは欧州のデジタル競争力を高める取り組みの例として、タリンに次世代スマートファクトリーを建設するためのエリクソンの投資や、NIBなどの投資機関の支援を挙げました。
「NIBとの資金調達契約は私たちのレジリエンスを高める重要な手段です」とエクホルムは述べています。「パートナーシップに感謝しています。これはエリクソンのみならず北欧・バルト海地域にとっても良いことです」
「共に強くなる - 新しい地政学的現実と北欧・バルト地域への影響」と題されたこのエクホルムの講演の聴衆には、エストニアのアラル・カリス(Alar Karis)大統領と北欧閣僚理事会のカレン・エレマン(Karen Ellemann)事務局長の姿もありました。