エッジの専門家が語る、成功するエッジコンピューティング実装戦略
エッジコンピューティングの実装に関しては、CSP(Communications Service Providers:通信事業者)が早期に行動を起こすビジネスケースが有利です。スケーラビリティ、セキュリティ、可用性、低遅延性、帯域幅等の厳しい要件に応えられるエッジコンピューティングは、最適な配置、サービス品質、データ保護などの点で大きな新しい機会をもたらします。
リナックスファウンデーションのState of the Edge Report 2021によると、世界のエッジコンピューティングインフラのITパワーフットプリントの総計は、2019年から2028年の間に40〜70%のCAGR(Compound Annual Growth Rate)で増加し、推定で8,000億米ドルに達すると予測されています。では多くのCSPにエッジ導入をためらわせているのは何でしょう。エッジコンピューティング実装の第一歩を踏み出すために、CSPは何をする必要があるのでしょう。成功するビジネス戦略を構築し、成功の機会を最大化するにはどうすればいいのでしょう。以下ではこのエキサイティングで画期的なテクノロジーで頂点を目指すCSPに、重要な段階的な戦略的アドバイスを送ります。
エッジはあなたが考えるより近くにあるかも知れません
通信業界の人々の多くは、エッジコンピューティングはスタンドアローン製品であり、これらの機能へのアクセスに多額の先行投資を必要とする新しい技術であるとあなたを信じ込ませようとしています。しかしこれは正しくありません。エッジコンピューティングとは、実際にはCSPがすでにその多くを持っている既存の機能の拡張なのです。
新しい冒険や旅と同様に、まず最初にやらなくてはならないのは今のあなたの立ち位置の確認です。多くのCSPは、エッジコンピューティング実装要件の中核部分を構成するリソースをすでに持っています。エッジの真の価値と呼ぶべき遅延の短縮とデータ主権は、実際には接続性と組み合わせることによってのみ発揮されます。エッジコンピューティングサーバーが家のすぐ外にあっても、すべてのデータをたとえば海外など、ネットワークの中央のどこかに運び、また戻さなければならないのであれば、性能の増加は見込めません。
これはすでに相当数の分散化された資産を持っているCSPの大きな強みです。CSPには、エッジコンピューティングに関して最も重要な要素、すなわち場所があるのです。4G以来私たちが見てきた業界とネットワークのトランスフォーメーションは、すでに大きな進歩をもたらしてきました。現在のネットワークでは、専用のハードウェアや装置を必要としないアプリケーションがすでに実行されています。また分散されたサイトと立地で、これらのアプリケーションを走らせられるクラウドコンピューティングを実行し、リソースを保存できるのです。結局のところ、構築に長い時間を要する必要な機能の多くは、すでに存在しているのです。
エッジコンピューティングの実装に必要なのは知識です
CSPがすでに持っている次の強みは情報です。エクスポージャーや5Gとエッジのユースケースを実現するために不可欠な、誰がどこでデータを生成し消費しているのかという情報にアクセスできます。アプリケーションがデータを特定の場所に置く必要があったり、特定の帯域幅や低遅延性が必要なときは、それを事業者のネットワーク内に展開する必要があるでしょう。事業者は、すべての必要な情報をたやすく手に入れることができます。
問題は、バリューチェーンに加わり機会を追求するつもりがCSPにあるかどうかです。それとも、仮想ケーブルのように接続を提供するだけでしょうか。結局のところ、事業者がこれらの機能を活用するための行動を起こさず、または必要な資産を用意しなければ、事業者が参加しようがしまいが競合他社や他のプレーヤーが実現するソリューションを確実に見つけるでしょう。
CSPがエッジコンピューティングの実装を検討する際にまずすべきことは、既存の資産と機能を綿密に調査することです。どこにどのようなリソースがすでにあるかを調べるのです。エッジはあなたが思っていたよりすぐ近くにあるかもしれません。
エッジで成功するビジネス戦略
現在の資産と能力の面でCSPにはかなりの強みがありますが、エッジの機能を使って競争に勝ち抜くためには、考慮すべき重要な事項がいくつかあります。エッジは既存の機能の拡張ではありますが、CSPはその事業面、技術面、エコシステムの面で、その方法と選択を抜本的に変える必要もあります。
ステップ1 – 新しいビジネスアプローチへの移行
これまでの移動体通信事業は、多くの事業分野とは正反対の方法で運営されてきました。CSPはまずインフラを構築し、多くのモバイルデバイスが登場したところで、できるだけ多くの加入を取得することに集中します。しかし5Gとエッジコンピューティングに関しては、移動体通信事業のあり方に変化が見られます。真の簡単な成功は見られず、キラーユースケースやアプリケーションの登場が待たれている状況です。需要の観点からユースケースを構築し、提案を開発する場所とその方法を決定する前に市場を深く理解する必要性は、多くのCSPにとってまったく新しい状況で、構造化された戦略的アプローチまたは強力なビジネスパートナーの指導が必要になります。
先進的な事業者は、機会到来と見たいくつかの戦略的分野に取り組み始めており、すでに具体化できるユースケースとその実現性を理解するために、それらの業界と関わっています。アナリシス・メイソンのEdge Cloud Trackerによると、通信事業者がすでに参入している市場の上位三つは、製造業界、ゲーム及びエンターテイメント業界、医療業界です。主なユースケースにはリアルタイム分析、自律型コネクテッドカー、動画最適化があります。
これらは最大の可能性を秘めた分野と見なされていますが、エッジコンピューティングがまだ開発の初期段階にある点には注意が必要です。またエキサイティングでスケーラブルなユースケースのいくつかが存在する製造分野や医療分野などでは最新技術の市場投入時間に長時間を要することから、エンターテイメントやゲームのユースケースの方がはるかに急速な進歩を遂げています。したがってユースケースを特定して構築を開始する際には、ビジネス要素を考慮し、特定のニーズと要求を満たすためにその業界全体と緊密に協力することが非常に重要になります。
エッジの水平展開
考慮すべきもう一つの重要な点は、開発および検証したユースケースやアプリケーションを水平方向に展開し、他のバーティカル産業に拡大する機会です。たとえば情報をARグラス一式を介してオーバーレイで提供する、AR(Augmented Reality)のユースケースを考えてみましょう。このユースケースの開発では、フィールドエンジニアが電気メーターやガスメーターを一目で読み取って値を理解し記録できるようにすることも、電気工事士に配線構成を表示し、グラスから直接指示を得るられるようにすることもできるでしょう。
同じ機能を、スポーツの試合をライブで見せたり、関連する統計や選手情報をリアルタイムで表示するなど、エンターテイメントにも利用できます。これには非常に近いかあるいはまったく同じ技術が使われていますが、水平方向に拡張されており、カスタマーが提供するコンテンツも異なります。こっちの機会の方が先に、より簡単に実現できるかもしれません。エッジ実装を成功させるには、まず200サイトを展開してからキラーアプリケーションが登場するのを待つのではなく、事業に必要な技術とユースケースに基づいて構築を行い、その技術を使用して拡張する流れになります。
ステップ2 – 情報に基づいてユースケース主導で技術を選択する
前回のブログedge computing infrastructure and beyond: the 5 key factors for better edge choicesでも説明しましたが、エッジコンピューティングの技術と製品に関しては、数多くの重要な決定事項があります。これは劇的な変化が見られた分野の一つです。RFI(Request For Information)発行、製品の決定と展開という、これまでのベンダー選定及び調達方法は、以前ほど効果的ではなくなっているのかもしれません。
これらの決定は、マルチベンダー、マルチテクノロジー、マルチスタンダード、マルチクラウド環境で行う必要があるため、CSPは戦略レベルでユースケース主導のアプローチを取らなくてはなりません。ユースケースの要件を綿密に計画し、そこから構築する必要がある機能を特定します。必要とされる製品と技術によっては、最適なソリューションを提供するためにさまざまなベンダーやパートナーが必要になることがあります。選択肢はたくさんありますが、どこに投資すべきか、どこをパートナーに頼るべきか、それに伴うコストとメリットをどう評価するかが、混乱を招くかもしれません。すべては構築するユースケースによって異なるため、信頼できる戦略的パートナー(複数可)を見つけて協力する必要があります。マルチクラウドとエコシステム戦略を含むフルスタックの経験を持つベンダーが理想的でしょう。
ステップ3 – エッジのエコシステムで成功するためのパートナーシップ
エッジコンピューティングの成功のために考慮すべき三つ目のステップは、エコシステムです。前のステップで述べたように、エッジのユースケースには、新しいレベルのパートナーシップ、オープン性、協力が必要です。これも劇的な変化が見られた分野です。4Gでは物事は非常に簡単でした。どこかにあるデバイス、ネットワーク、サーバー、それがエコシステムだったのです。5Gの分散クラウドとエッジでは、このエコシステムはまったく新しいものになります。
先ほどのARグラスの例を考えてみましょう。事業者は、ネットワーク接続や配信などの特定の要素に対してのみ責任を負います。しかしサービスを実現させるには、デバイスを開発する企業、ARのレンダリングを行う企業、拡張現実技術を開発する企業、ユースケースに関連するコンテンツを提供する企業、特定のインフラでアプリを実行する企業などが必要です。CSPだけではこれらのすべてを行うことができないため、強力なパートナーシップが不可欠なのです。
前述の水平方向の拡張と同様に、垂直方向のシステムインテグレーターも、ユースケースを構築および拡張し、収益化を高める際の重要な要素になります。またICTベンダーからHCP(Hyperscale Cloud Providers)まで、さまざまな分野に投資してきた幅広いプレーヤーがいるので、特定のユースケースについて誰と提携するかを決める上で、エコシステムとそのプレーヤーを理解することは不可欠です。CSPはエンドツーエンドの全体的な観点から、要件とエコシステムを俯瞰する必要があるのです。あるプレーヤーやクラウドプロバイダーが、比較的集中化された特定のユースケースに最適な選択肢であっても、それがネットワーク内により広く分散される別のユースケースにも最適とは限りません。
最後に、エッジコンピューティングのエコシステムはその性質上高度に細分化されており、独立系のベンダーが開始した非常に多くのソリューションがあります。そのためパートナーと製品がニーズ、ユースケース、市場に合わせて統合されるエッジにおけるエクスポージャーには、優れたオープンな方法を採用することが重要です。標準や規制に関するグローバルなコンセンサスが欠如しているので、データが現在と将来のニーズを満たす有用で消費可能な形式で生成され、共有されるようにすべきです。
CSPはエコシステムを信頼し、世界規模でエコシステムを構築したり、そこで活動したりしている戦略的パートナーを探す必要があります。たとえばエリクソンも、ある市場で特定のCSP及びアプリケーションやデバイスプロバイダーと協力してきた協力関係から得られた重要な知見と経験を使い、他の市場の他のCSPによるユースケース導入をお手伝いし、市場投入時間を大幅に短縮することができます。
エッジはどこへ向かうのか
短期的には、事業者が企業やパートナーとの関係を確立し、より協力的なアプローチに移行することで、前述の水平展開の増加が期待できます。データに対するこれまでの制御の一部を手放して、資産やリソースの使用とアクセスを開放することと引き換えに、新しい機能やサービスへのアクセスが手に入ります。低遅延性、高帯域幅、分散セキュリティ、ネットワークの耐障害性が、新しい現実になることでしょう。
長期的に見れば、エッジも他のほとんどの技術と同様に自動化が進み、エッジインテリジェンスが登場することでしょう。これは遠い将来のことではなく、消費者や企業からの要求の高まりを受けて、商用展開とともに進化する可能性が高いです。一方でデバイスがエッジに近づく方向への進化も見られるはずです。
今日の市場にあるソリューションのほとんどは、エッジでデバイスを使っていますが、デバイス側はエッジを認識していません。今後はエッジを認識するスマートなデバイスがネットワークからのデータ及びインテリジェンスと連携し、負荷のオフロード機能に基づいて提供するサービスの種類とタイミングと場所、リソースの最適な割り当てなどの決定を下すソリューションが登場し、それはネットワークにまったく異なるダイナミクスをもたらすことでしょう。だからCSPは、テクノロジーがどこに向かうのか、そしてエコシステムでどのように行動するのが賢明なのかを念頭に置いておく必要があるのです。
エッジコンピューティングは、実装が複雑で困難な技術のように思えるかませんが、強力なエッジ戦略の構築は、CSPにとって最重要な五つの課題の一つです。基盤はすでに構築されています。ですからこの新しいエコシステムであなたの立ち位置を見つけるのを手伝ってくれる知識豊富な強力なパートナーがいれば、その機会を逃す手はありません。
もっと詳しく
以前のブログ記事edge computing infrastructure and beyond: the 5 key factors for better edge choicesはこちら
エリクソンのエッジコンピューティング、戦略、関連製品の詳細をご覧ください。
エリクソンのCTOのエリック・エクデンが、新しいイノベーションエコシステムを構築している5Gとクラウドプラットフォームについて、ポッドキャストでご紹介しています。
関連コンテンツ
Like what you’re reading? Please sign up for email updates on your favorite topics.
Subscribe nowAt the Ericsson Blog, we provide insight to make complex ideas on technology, innovation and business simple.