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通信インフラが地球温暖化抑制のカギとなる理由

※本ブログは東洋経済オンラインに掲載した記事広告を許諾を得て本ブログに再掲しています。
制作:東洋経済ブランドスタジオ

移動するより「5Gを使う」方が地球に優しい?

「地球沸騰化」ともいわれ、脱炭素化が急務な今、見落とされがちなのが通信インフラだ。グローバル通信大手・エリクソンでネットワークスR&Dジャパン 部長を務める吉田奈穂子氏は、「通信インフラには、幅広い業界の温室効果ガス排出量を低下させるポテンシャルがあります」と話す。同社の試算によれば、最大で15%の排出量削減に貢献できるというが、なぜそこまでの威力があるのか。同社の事例を当たりながらその理由を探った。

Head of R&D Networks Japan

Graphic Image of a hand holding small earth.

Head of R&D Networks Japan

Head of R&D Networks Japan

通信インフラでマングローブの生存率が向上

マングローブをご存じだろうか。熱帯、亜熱帯地域で淡水と海水が混ざり合う場所に生育する植物の総称だ。沿岸地域を暴風雨から守り、多様な海洋生物の生息地として機能するほか、二酸化炭素の吸収量が非常に多い。いわば「未来を守る森」ともいえる存在だ。

社員が協力してマングローブを植える様子

気候変動への対応が急務となっている今、マングローブの植林活動は大きく注目されているが、実は通信インフラが重要な役割を果たしているという。スウェーデンの通信インフラ大手の日本法人、エリクソン・ジャパンのネットワークスR&Dジャパン 部長である吉田奈穂子氏は、次のように説明する。

吉田菜穂子

エリクソン・ジャパン 無線ネットワーク統括本部 ネットワークスR&Dジャパン 部長

吉田 奈穂子 氏
2015年にエリクソン・ジャパンに入社。前職を含め、一貫してモバイルネットワークの無線技術開発・営業に従事し、現在は5Gの収益化や持続可能なネットワーク構築の支援に携わる。学生時代の理工学修士に加え、2024年3月には環境学修士課程を修了

「伝統的な植林方法で、苗木から成木まで生き残るマングローブは40%程度※であることが研究でわかっていました。エリクソンはこの確率を向上すべく、土壌の湿度などをリアルタイム監視できるセンサーやカメラを現場に設置し、数値を見ながら管理できるようにしました。すると、マングローブの生存率は最大80%程度※と約2倍まで向上させることができました。2015年にマレーシアで開始したプロジェクトは予定していた全エリアで順調に生育したため終了し、現在はフィリピンとインドで同様の取り組みを続けています」(吉田氏)

これは、土壌の湿度などのデータや画像を送信する通信インフラがなければ成立しなかった話だ。また土壌管理にかかる人の移動(データ収集のための現場訪問や通勤など)を最小限にすることで、車などの燃料消費により生じる温室効果ガスの排出を抑えることもできる。

「私自身、子育てをしていることもあって、地球環境には関心というよりも強い危機感を持っています。

そのため、業務の傍ら、大学院にて環境マネジメント学を学びました。その中で、人やモノなどの物理的な移動に伴う温室効果ガス排出量に比べて、それを通信に置き換えた場合の排出量は非常に小さいことがわかりました。通信インフラを整備することによって、さまざまな場面における物理的な移動を最小化することができ、通信技術は幅広いビジネスセクターの脱炭素化に貢献できると考えています。

エリクソンが参画しているExponential Roadmap Initiativeのレポートでも、ICTソリューションは2030年までに世界の温室効果ガス排出量を最大15%削減できるポテンシャルを秘めているという試算を出しています」(吉田氏)

幅広い領域で脱炭素化を加速させる5Gインフラ

15%とはインパクトのある数字だが、エリクソンの取り組み事例を見ると決して大げさではないことがわかる。

例えば、米国・テキサス州にあるエリクソンのスマートファクトリー*1では、ファクトリー内にローカル5Gネットワークを構築することで消費電力を8%、エネルギー消費量を24%削減※することに成功している。中国・南京のスマートファクトリー*2でも、5Gによってドローンや無人搬送車を動かすことで、消費電力を抑えながら作業効率を最大50倍※まで改善させている。

中国とアメリカのスマートファクトリー

左:中国・南京のスマートファクトリー 右:米国・テキサス州のスマートファクトリー

「無人搬送車は5G以前から活用されていましたが、Wi-Fiの接続が切れたり遅延が起きたりと、動作が不安定になることがありました。また、Wi-Fiは出力が弱いのでアクセスポイントを多く設置する必要があり、かつ電波干渉が起きないよう配慮しなければなりません。その点、5Gは干渉や遅延を最小限に抑えられますので、安定した通信環境を実現できます」(吉田氏)

屋外での事例としては、イタリアのリヴォルノ港全域に、4G/5Gのプライベートネットワークを展開したテストケースにも注目したい。

「設置したカメラでクレーンや船を撮影し、AI技術を活用してデジタルツイン*を構築しました。それによってクレーンの稼働時間を低減させるなど、250万ユーロ(2024年5月時点で約4億1570万円)のコスト削減と25%の生産性向上、コンテナターミナル当たり8.2%の温室効果ガス削減効果※が出ています」(吉田氏)

現在は英国を代表する港の1つであるタイン港*3など、ほかの大規模な港にもエリクソンのネットワークが導入されているという。

イギリスのタイン港

*デジタルツイン:現実の世界から収集した、さまざまなデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術のこと

通信ネットワークの大幅な省電力化を実現

いずれの事例も、脱炭素効果だけでなく、生産性の向上も同時に実現していることがよくわかる。しかし、従来では難しかった「高速大容量」かつ「多数同時接続」を可能としているだけに、5Gネットワークそのものの電力消費量が多いのではないかと懸念する人もいるだろう。こうした問いに、吉田氏は次のように答える。

「確かに、モバイルネットワークの消費電力量は増えてはいます。2011年から2021年までの10年間で、91TWh(テラワットアワー)から150TWhへと約1.7倍※になりました。データのトラフィック量がその10年間で約300倍※となっているのに比べれば、そこまで多くはありませんが、今後さらにデータトラフィック量は増えていく見込みですので、消費電力量の上昇カーブを抑えなくてはなりません。グローバルで約250億ドルの電気料金がかかっている※現状も、クライアントにとってはサステナブルではないというのが、エリクソンのスタンスです」(吉田氏)

そこで、5G商用サービスの開始前から、エリクソンはBreaking the energy curveというコンセプトの下、自社製品の省電力化を加速。標準仕様において第4世代のLTEよりも通信のビット効率*がよい5Gの開発に加えて、独自のシリコン技術やソフトウェア機能により、さらなる省電力化を実現してきた。

*ビット効率:ビット当たりのデータ伝送電力効率のこと

「駅や繁華街など人口密集地での通信品質を高める5Gの目玉技術『Massive MIMO(マッシブ マイモ)』は、エネルギー効率が最大10倍まで高まりました。最新世代の無線およびベースバンド製品においても、前世代よりエネルギー効率を20~40%向上※させることに成功しています。

そのほかにも、エリクソンシリコンという独自開発の各無線処理に特化した専用チップを使用することで、製品の小型化を実現しつつ、高いエネルギー効率を実現しています。また、窒化ガリウムを用いた高効率なパワーアンプを採用するなどあらゆるコンポーネントにおいて省電力化を図っています」(吉田氏)

環境性能を向上させたエリクソンの製品

ハードウェアだけでなく、低トラフィック時のエネルギー消費を抑制するスリープ機能を搭載し、AIによる自動的な最適化を行うなど、ソフトウェアや運用サービスによるカーボンフットプリント低減にも抜かりはない。80社以上の通信技術ベンダーおよびサプライヤーの中からサステナビリティ総合リーダーに選出*されたのもうなずける。 *ABI Research「Sustainability Assessment report」(2023)

「2023年11月末に開催されたCOP28では、パリ協定の目標達成にはまだ隔たりが大きいことが確認されました。それを受けて、欧米のトップグローバル企業はサプライチェーンに対する脱炭素化をより強く求めてくると思われます。日本も業界全体としてこれに取り組んでいく必要があります」(吉田氏)

グローバルで脱炭素化が待ったなしの状況である中、温室効果ガス削減と生産性向上を同時に実現する5Gインフラは、「地球沸騰化時代」を生き抜くために欠かせない武器になるだろう。通信業界におけるエリクソンの旗振りに今後も注目したい。

※文中に「※」のついた数値データはいずれもエリクソン調べ

脱炭素化を推進するエリクソンの取り組みの詳細はこちら

*1 エリクソンUSAの5Gスマートファクトリー 
*2 エリクソン南京スマートファクトリーにおけるデジタルトランスフォーメーション
*3 タイン港が英国で初めて港湾全体にプライベートネットワークの展開を開始

(2024年6月作成)

 

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