クラウドネイティブ5Gによるスケールアップ:貴重な知見とポイント
- 世界中で40を超えるCSPs(Communication Service Providers:通信事業者)が、公共ネットワークで5G SAを開始または展開しています。
- これらのネットワークをサポートするために、クラウドネイティブの5GC(5G Core)が開始されました。またあるTier-1のCSPはクラウドネイティブのEPC(Evolved Packet Core)を立ち上げています。
- このブログでは、3GPP標準のあいまいさを解決し、5Gサービスの提案を改善し、マルチベンダーのフィールドインテグレーションを実現する方法など、クラウドネイティブコアネットワークの大規模運用から得られた貴重な知見と重要な学びを解説します。
クラウドネイティブコアネットワークの大規模運用の準備
当初の5G展開を成功させた通信業界は、さまざまな地域でネットワークとデバイスが広く展開されているのを目の当たりにしています。現在は5G SA(Standalone)へ着実に移行する段階である次のフェーズに入っています。5月には世界中で少なくとも40のCSPが、公共ネットワーク1で5G SAをローンチまたは展開しました。
エリクソンは2020年以来Tier-1 CSPの5G SAネットワークをサポートする商用ライブクラウドネイティブデュアルモード5GC、また2019年以来Tier 1の5G NSA(Non-Standalone)ネットワークをサポートする商用ライブクラウドネイティブEPCを通じて、初期のクラウドネイティブコアネットワークから豊富な経験と学びを得ました。これらのクラウドネイティブネットワークの一部は現在2,000万人以上の加入者にサービスを提供しており、品質測定とKPI(Key Performance Indicators)達成に基づいた独自の知見をもたらしています。
以下ではこうした重要な学びと知見のいくつかを共有します。
3GPP標準の曖昧性に起因するパラメータ調整の必要性
私たちはTier-1 CSPと協力して大規模な商用展開を強化することで、3GPP標準に含まれるパラメーター設定に関わる複数の曖昧性を特定しました。エリクソンはお客様と緊密に協力し、パラメーター調整を通じてこれらの曖昧性を解決するための貴重な知見を得ました。
改善された5GCアーキテクチャーにより5Gサービス提案を再検討してソリューションを簡素化
大手Tier 1事業者とともに、4G∕5GのNSAセッションの5GCへのアンカリングを伴って、ハイブリッドコアに3GPP R16ソリューションを展開しました。改善された5GCアーキテクチャーを伴う5Gサービス提案の再検討は、NSAデバイスとSAデバイスの5Gサービスを可能な限り共通化し、効率的な将来の進化のためにユーザープロファイル、ポリシー、課金を最新化するために有益な取り組みでした。
クラウドインフラをチューニングして通信グレードの特性を最大化および確保
クラウドインフラは、キャリアグレードの負荷を特定の特性要件でサポートできなくてはなりません。私たちは、展開済みの通信アプリケーションを使ってライブトラフィックを運用している場合、これを後付けで実行することは困難であり、事前にそれを確保することが重要であると学びました。
予想よりも簡単だったマルチベンダーのフィールドインテグレーション
マルチベンダー環境での相互運用性は、すべてのCSPにとって重要な課題です。私たちは、インテグレーションを成功させるためにフィールドインテグレーションに十分先立って相互運用性試験を計画し実施することの重要性を、その経験から学びました。ライブ商用5GCネットワークでサービスプロバイダーと協力し、20の異なるベンダー機器を使って約30の5GCインタフェースを検証しました。
2年間で、すべての主要なチップセットおよびデバイスベンダーと、5G SAのエンドツーエンドの相互運用性試験を早期に完了しました。結果的にマルチベンダーのフィールドインテグレーションとデバイス、RAN、5GCのインターワーキングは、想定よりも容易なものとなりました。
EPSフォールバックは5G Voiceの最初の導入ステップ–ネットワークのチューニングに3ヶ月を想定
音声サービスに関しては広範な微調整を実施しました。現在のEPSフォールバックは、VoNR(Voice over NR)が導入されるまで、スマートフォンがデータサービスのために5G SAネットワークにアクセスするためのソリューションです。EPSフォールバックは音声サービス用に十分に調整済みの4G VoLTE(Voice over Long-Term Evolution)ネットワークを活用するため、VoNRと比べて5G SAネットワークの構築とチューニングに必要な労力が少なくて済みます。
ただしEPSフォールバックの導入に課題がないわけではありません。5G-to-4Gモビリティ手順は、5G NSAのアーキテクチャーを使う従来のVoLTEや4G∕5Gデュアル接続と比較して、呼セットアップ時間が長くなります。それでもEPSフォールバックのデータセッションのセットアップ時間やデータピークレートなどの他のKPIは、5G SAアーキテクチャーがもたらした改善のおかげで、性能面で4G/5Gデュアル接続を上回ります。
現在時点でEPSフォールバックを組み込んだ5G Voiceの商用実績は18件あり、そのうち4件では商用サービス向けのVoNRも提供しています。
今年初めにバルセロナで開催されたMobile World Congressで、エリクソンの5GC戦略製品マネージャー、クリスター・ボーマン(Krister Boman)が、クラウドネイティブの商用展開から得た重要な学びと知見を紹介しました。
5GC展開体験の詳細については、以下の短い動画をご覧ください。
重要な機能を忘れない
当然ながら、大規模なクラウドネイティブコアネットワークにおいては、基本的なコア機能と新しい革新的な機能の重要性を見逃すことはできません。それらのいくつかを掘り下げてみましょう。
ISSU(In-Service Software Upgrade)
クラウドネイティブ製品のISSUとライフサイクル管理を通じて、日中のアップグレード実行やコストのかかる夜間の保守ウィンドウの排除などによる新しい働き方が可能になります。三つのP(People, Processes and Product)が含まれるこの変革の取り組みは、オプションではなく不可欠なものです。ISSUは、クラウドネイティブコアネットワーク上の多数の変更を管理する上で、重要な役割を果たします。エリクソンの測定では、ISSUアプリケーションのアップグレード中の平均シグナリング成功率が99.98%を超えていることがわかっています。
次にインフラに目を向け、CaaS(Containers-As-A-Service)のローリングアップグレードについて調べてみましょう。Workerノードのドレインにより、Kubernetesのローリングアップグレードや、他のクラウドインフラのアップグレードや保守が容易になります。保守ウィンドウ中にドレイン手順を実行し、オプションとしてトラフィックを移行することをお勧めします。Pod のdisruption budgetを使うことで、Workerノードのドレインを制御できます。エリクソンデュアルモード5GCアプリケーション実行中のエリクソンNFVIのCaaSローリングアップグレードでは、99.99%を超える平均シグナリングレートが達成されています。
地理的冗長性
N-wayアクティブモデルは、5GC SBA(Service-Based Architecture)の主要な地理的冗長性モデルとして機能します。このモデルでは全インスタンスがアクティブとなり、NF(Network Function)Setモデルで使われるデータを複製してトラフィックを処理します。この方法は、4Gネットワークで利用されているモビリティ・プーリングモデルと一致しています。
NF Setが標準化されていないユーザプレーン機能では、NFアクティブ/スタンバイ地理的冗長モジュールが使われます。
UPFによる付加価値サービスの統合でクラウドインフラを最大50%削減可能
VAS(Value-Added Services、またはGi-LAN)の統合は、サービスプロバイダーに単純性、拡張性、柔軟性、セキュリティ強化、ネットワーク性能の向上をもたらし、高品質で革新的なサービスを顧客に提供できるようにすることで、ネットワークインフラとサービス提供において重要な役割を果たします。
VAS統合はエリクソンのパケットコアゲートウェイ固有の機能として、デュアルモード5GCソリューションに含まれています。統合にはソフトウェアプローブ、統合パケットコアファイアウォール、NAT(Network Address Translation)最適化、TCP(Transmission Control Protocol)最適化、ABR(Adaptive Bitrate streaming)ビデオシェーピング、輻輳認識および無線対応、ラージフローシェーピングが含まれます。
大手CSPの通常の構成ではUPFをSAコンポーネントとして使い、VASは個別のボックスに実装します。ただしNAT、TCP最適化、ファイアウォールが異なるサプライヤーによって提供され、異なるボックスに展開されている場合、大量のEast-Westトラフィックが発生します。エリクソンのパケットコアゲートウェイはこれらのサービスを統合することでこの問題に対処し、すべてのUPFユーザープレーントラフィック、ファイアウォール、TCP最適化を一か所で処理できるようにします。これによりEast-Westトラフィックが大幅に減少します。私たちの結果は、この方法が最大50%のクラウドインフラ削減につながる可能性を示しています。
サービスプロバイダーは、商用ライブネットワークでこれらの利点を認識しています。
- VAS機能をパケットコアゲートウェイに統合することで、単純性、拡張性、柔軟性を実現
- 機能の統合は外部ソリューションと比べて展開と運用に必要な労力が少なくて済みます
- 統合されたファイアウォールは、より柔軟なセキュリティソリューションを提供します
- ソフトウェアプローブにより安全で効率的な問題検出と特定が可能
- 最適化によりエンドツーエンドのネットワークKPIを強化
以下ではクリスター・ボーマンが、コアネットワークにおけるクラウドネイティブのスケールアップとVASの統合について解説します。
実績あるワンコアネットワークソリューション
簡単に言えば、エリクソンのデュアルモードは、EPCと5GCのネットワーク機能を共通のクラウドネイティブプラットフォームに組み合わせ、効率的でシームレスな5G移行を可能にするものです。エリクソンのソリューションは2019年以来商用ライブトラフィックを問題なく処理しており、こうしたクラウドネイティブネットワークの一部は、現在2,000万人以上の加入者にサービスを提供しています。
まとめると、クラウドネイティブコアネットワークの大規模運用において大手CSPと緊密に協力することで得られた経験は、貴重な知見、重要な学び、展開の成功を導きました。結果的にこれらの経験は、効率的で優れたシームレスな5G移行への道を開き、サービスプロバイダーによる高品質で革新的なサービスの顧客への提供を実現しています。
もっとくわしく:
The cloud-native 5G Core network guide series
5G Core - get more insights and inspiration
1) GSA: 5G-Market Snapshot, May 2023
関連コンテンツ
Like what you’re reading? Please sign up for email updates on your favorite topics.
Subscribe nowAt the Ericsson Blog, we provide insight to make complex ideas on technology, innovation and business simple.