私たちが安全を確保し、電力を入手し、相互につながるためのレジリエントなエネルギー構成の一部に、エネルギーシェアリングを取り入れる必要があります。 異常気象による電力網への影響が続き、エネルギー供給の混乱が広がるにつれて、このことはますます重要になるでしょう。世界は再生可能エネルギーに向かっていますが、私たちは課題に直面しています。マッキンゼーは、欧州の電力需要が2030年まで毎年約3%増加し、既存のシステムにとって新たな負担になると予測しています。
今後私たちは単にエネルギーを消費するだけでなく、それを生成して共有するようになるでしょう。これを実現するには、発電と給電分野で新しいアクターと柔軟性を受け入れ、新たな機会を解き放つシステムが必要です。電力網を分散化し、単一のインテリジェントな通信ネットワークに接続することで、既存の送電網を変革してデジタルトランスフォーメーションを支えることができます。
電力が複数の場所で発電・貯蔵・共有される双方向電力網バリューチェーン時代の到来
IHS Markit のGlobal Power and Renewables Serviceによると、2021年には世界人口の4%が大規模な停電を経験し、中国と米国では最大規模の混乱が発生しました。2019年にカリフォルニア州公安当局が実施した、エネルギーインフラが山火事を引き起こすのを防ぐための計画停電のような戦略は、世界中で普通に行われることになるでしょう。
寒冷な天候が電力インフラに影響を及したら水力発電の供給は混乱し、エネルギー危機管理は新たな緊急性を帯びることでしょう。集中型システムの耐候性を高めて電力網を「強化」する従来の方法は実現に10年を要し、柔軟性を欠き、準備が進んでいないうえ、数十億ドルの費用がかかる可能性があります。
2021年には世界人口の4%が停電を経験した
しかしこのような事態は必然ではなかったはずなのです。自宅にいるあなたが、町に停電が差し迫っているというメッセージを受け取ったことを想像してみてください。あなたはデジタルエネルギーインタフェースをチェックし、ご自宅の発電量と近所に蓄えられている電力の両方を確認できます。システムは残された電力とそれを最適に使う方法を確認し、緊急かつ重要な地域サービスを優先し、電力の一部を病院・消防・救助サービスに供給します。近い将来のエネルギーシステムは、安全な無線ネットワークを使って重要なデータをリアルタイムで共有することになるでしょう。
このシナリオでは、自宅以外のどこにエネルギーをローカルに蓄えることができるのでしょう。多くの国のICT産業は、停電時に接続サービス(特に緊急サービス)を使えるよう、通信サイトに電力バックアップを配置することが義務付けられています。リモート接続を備えたバッテリーで動作するスマートなICTサイトが、TSO(Transmission System Operator)にグリッドの周波数や電圧レベルを安定させるためのサポートを提供します。
「スマートなエネルギーシステム管理には、インテリジェントなモバイルネットワークが必要です。 AIはエネルギー配分を管理し、問題を予測し、停電の影響を軽減するのに役立ちます。 AIは迅速に動作し、社会が安全に機能することを確保する判断を下すことができます。」
エリクソンネットワーク部門担当上席副社長兼
ゼネラルマネージャー
ICT産業とエネルギー産業の協力は互いを強化し、緊急事態や、人々が電力や接続のない脆弱な状況に放置される事態を防げるはずです。
エネルギー関連の資産には広範な相互接続性がもたらす機会があり、レジリエントで信頼性の高いエネルギーは消費者にとっても利益になります。近い将来の住宅所有者は電気自動車のエネルギーの一部を自宅の別の機能に使うことを選択できるようになります。この新しい多様化により、行政当局には、消費者を含む複数の利害関係者に電力から新たな収入を得る権利を認める必要性が生じることでしょう。
化石燃料の利用削減に取り組んでいる世界は、太陽光および風力発電ベースのソリューションに目を向けています。マッキンゼーは、2030年までにこの二つの方法が欧州のエネルギーの60%を提供することになると予測しています。しかしこれらは自然環境の変動に応じて断続的に発電するので、その管理は複雑化します。
これらの断続的なソースをグリッドに導入するTSOは、電気周波数が安定していることを確認する必要があります。
この新しい課題を考えると、エネルギーインフラには停電や電圧低下を軽減するためのスマートな通信サービスが必要です。たとえば長寿命バッテリーソリューションが展開されていれば、需要が少ないときに再充電または電源の切り離しを行い、ピーク時にはオフグリッドにしてバッテリーで動作する、一時的なグリッド電源として機能できるかもできません。これは安全なモバイルネットワークによって実現可能です。
EU内の多くの国では、すでにかなり前から住宅所有者がエネルギーを電力会社に売り戻すことで料金を相殺するインセンティブを持って太陽光発電を行っており、消費者が「プロシューマー」になるのは普通のことになっています。しかしこれは世界的には一般化しておらず、またローカルストレージ、エネルギーシェアリング、自律性などの分散化の利点が活用されていません。
個人による発電が世界の主流になり、すべての建物の一部に個人所有の風力発電と太陽光発電設備が組み込まれるようになると、分散型発電設備の容量、再生可能エネルギー源の種類、頻発する異常気象に応じた安定した電気周波数の確保といったTSOの課題は大きくなることでしょう。
予測不可能な気候を前にして、どのように計画を立てればいいのでしょう。
進化した未来の発電には、発電能力と消費レベルの両方を監視する測定装置として機能する、単一のインテリジェントなモバイルプラットフォームが必要になります。リアルタイムの需要に適応し、影響が拡大する前に停電を予測する常時稼働の無線センサーネットワークを想像してみてください。私たちの世界を仮想化したデジタルツインを使って計画不可能な事態をシミュレートし計画する、組み込み型のインテリジェントなグリッドソリューションです。単一のモバイルプラットフォームにより、シームレスで迅速かつインテリジェントにオーケストレーションを行い、AIを活用してエネルギー利用の時と場所を制御し、エネルギーシェアリングを自動化できます。インテリジェントなモバイルネットワークは、スマートグリッドのデジタル化と自動化に不可欠なのです。
このインフラは、スマートグリッドが外部のリスクや脅威に対抗できるよう、セキュリティを中核に構築されます。プロバイダーはプライベートLTE(Long-Term Evolution)と5Gを使って安全なプライベートセルラー無線ネットワークとエッジコンピューティングにアクセスし、データをオンサイトで安全に保護できます。フランスではEDF(Électricité de France)がエリクソンと提携し、EDFの従業員とそのパートナーが安全な端末を介してリソースにリモートアクセスできるよう、サイトの接続性を強化しました。
エネルギー事業者は、自動化とリモート監視を通じて自己監視、自己診断、自己修復が可能かつ安全な単一のモバイルプラットフォームを利用し、ICTプロバイダーと協力して運用コストと複雑性を大幅に削減できます。固定ネットワークではなく、複数の既存のネットワークを統合したセルラー無線網を使うことで、複数の経済的メリットが得られます。
再生可能エネルギー生成に至る道筋のどの段階にいるかは、国によって異なります。グリッドの複雑さと規模を考えると、送電容量の拡大とボトルネックの解消には15年~40年もの投資を計画する必要があり、非常に長い時間がかかります。
1982年以前に発電所の3分の1が建設されたポーランドでは、システムの老朽化によりグリッド容量が不十分なために再生可能エネルギーの約60〜80%が接続できなかったと、同国気候環境省副大臣のアンナ・ウカシェフスカ=トシェチャコウスカ(Anna Łukaszewska-Trzeciakowska)氏は述べています。エネルギーインフラの刷新が進む一方で、変化も現れています。ポーランド最大の電力会社であるPolska Grupa Energetycznaは、500万を超える電力メーターの安全なリモート読み取り、ディスパッチャー通信サービス、自動ネットワーク制御メカニズムを支援する重要なモバイルネットワークソリューションを実現するため、エリクソンと提携しています。
設備の刷新を続け、既存の資産を最大限に活用することに取り組んでいるエネルギー業者は、プライベートセルラーLTE / 5Gネットワークと多数のIoT(Internet of Things)センサーを使うことで、資産の状態をリアルタイムで監視できます。これによりシステムの部品を交換するか保守するかを迅速に決定できます。デジタルインフラは、数多くの小さな資産からの電力を効率的かつ大規模に集約する新しいビジネスモデルもサポートします。複数の旧弊化した通信ネットワークを統合し、それらを単一の高速で広大なモバイルネットワークに置き換えることで、断片化が進むエネルギー環境を統合できます。
Climate Centralによると、米国では2011~2021年の期間に、年間平均の気象関連停電回数が2000~2010年の期間との比較で約78%増加しました。エネルギーの中断は危険なだけでなくコストが発生します。電力網をデジタル化することで、プロバイダーは使用量を最適化し、無駄を避けることができます。グリッドは危機時により堅牢になり、生産性の低下などの停電によって発生するコストを抑制します。エネルギーオーケストレーション、CSP(Communications Service Providers)、ICT、電力会社のパートナーと協力することでエネルギーコストを削減し、アンシラリーサービスから新たな収益を得ることができます。関係者が一丸となって分散型のスマートグリッドシステムを構築することは、長期的に費用対効果を高める方法です。
無線接続に支えられて連帯したエネルギーシェアリングは、激動の未来において社会を機能させ続けることができます。次のシナリオから、新しいシステムがどのように役立つかを想像してみましょう。
- 人命救助:ドローン救急車は無尽蔵の通信を通じて重要な医療を提供し、再充電して次の目的地に向かうことができます。
- 水資源管理: ウォーターポンプは電気に依存しています。堅牢な電力ネットワークにより、安全な飲料水と排水を確保できます。
- 資本へのアクセス: デジタルでアクセス可能なお金によって、食料や物資を継続的に購入できます。
- 援助の要請や友人や家族との連絡: ICTとエネルギーシステムの統合は、災害後の最も必要なときに接続を確保します。
接続性は、激動の未来に機敏に対応できるスマートで信頼性が高く安全なシステムであるレジリエントなエネルギーシェアリングインフラ実現のカギを握っています。政策を変え、エネルギーを貯蔵する方法とネットワークを構築する土地に適切な投資を行うことで、無限の可能性が開けます。エリクソンは世界中の政府や産業と提携して重要なインフラを管理し、公益事業分野でイノベーションを推進しています。
この新しいエネルギーモデルは私たちをどこに連れて行くのでしょうか。ゼロエネルギーデバイスからAIによるエネルギー管理支援方法に至る様々な機会が私たちを待っています。
リンクをチェックして詳細をご覧の上、寄稿者にご連絡ください。
寄稿者
謝辞
ヘレン・ハルバーグ(Helene Hallberg)
エリック・サンダース(Erik Sanders)
ラース・フムラ(Lars Humla)