ディスカッション:変化の力を探る
私たちはVUCAの世界(Volatile/Uncertain/Complex/Ambiguous、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)に生きているため、自分達がどこに居るのか、どこに居たいのか、また、私たちの未来は何によって形成されることができるのかを理解することがますます重要になっています。今後、課題、また、機会となるものは何でしょうか?
将来を見据えようとすると、理解が困難な様々な傾向が長いリストに羅列されていく可能性があります。私たちは最も重要であると信じるいくつかを統合することにしました。取り組む必要のある諸課題や先にある機会をハイライトしながらこれらのトレンドに取り組むことで、状況が見えてきます。私たちは常に環境を監視し、知見や先見性を生み出す変化の傾向と兆候を探しています。
上級副社長兼マーケティングおよびコーポレートリレーションズ責任者、ステラ・メディコット、CTO兼GFテクノロジー責任者、エリック・エクデン、そしてエリクソンリサーチ責任者、マグナス・フロディとこの変化の力を探求してみて下さい。私たちが特定した最も重要な社会政治的、地政学的、技術的な変化の力が網羅されます。
内容に含まれている社会的および地政学的な力の中に気候危機があります。これは、もはや「存在する課題」ではなく、「解決すべき課題」と見なされている領域です。また、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック後にありうる未来についての詳細について、パンデミック後の4つのシナリオを特集する未来研究所の記事の視点を通して説明します。
最後に、社会経済の変動性と、電気通信が今も、これからも果たしてゆく重要な役割について探ります。いくつかの研究から判明している様に、モバイルブロードバンドはGDPの伸びや労働生産性向上に直接影響します。
テクノロジーの面では、グローバルな規模とグローバルな基準に対するニーズの高まりに注目しています。私たちはスマートフォン以降の新しい10年に突入します。まずXR(AR、VRメガネ)が推進する多くの新しいデバイスタイプを目にするでしょう。私たちはサイバーフィジカルコンティニュアム(連続体)と呼ばれる世界に住むことになります。私たちの周りのすべてがデジタル的に双子(デジタルツイン)になり、物理的世界とデジタル世界が無制限の接続を通じて同期します。さらに、回復力とプライバシーを保護する必要性がどのように重要な要素になるかについても説明します。
テクノロジーの面では、グローバルな規模とグローバルな標準に対するニーズの高まりに注目しています。私たちはスマートフォンを超えて、新しい10年に突入します。最初にXR(AR、VRメガネ)によって推進される多くの新しいデバイスタイプが表示されます。私たちはサイバーとフィジカルの連続体と呼ばれる世界に生きることになります。私たちを取りまくあらゆるものがデジタルツイン化し、そこでは物理的世界とデジタル世界が無制限のコネクティビティによって同期します。さらに、耐性とプライバシー保護の必要性が、いかに重要な要素になるかについても説明します。
皆さんにも、私たちの世界を形成していると私たちが考えているトレンドを、それぞれどの様に関係づけるかに関する対話に参加して頂きたいと思います。一緒に新しい未来を作りましょう。それはPossible(可能)です。
パンデミック後:
次は何が起こるのか?
未来研究所、マリナ・ゴーブリス(Marina Gorbis)、リーア・ザイディ(Leah Zaidi)による寄稿
2020年、IFTF(the Institute for the Future、未来研究所)は、今後10年間のパンデミック後の可能性を探求するための一連の四つのシナリオを作成しました。本記事では、二つのシナリオに合わせて、より大きなグローバルな視点と、新たに登場するICTのトレンドについて検討しました。皆さんが、より公平で環境的に持続可能な未来を思い描くための一助となることが目的です。
皆さんが、より公平で環境的に持続可能な未来を思い描くための一助となることを意図しています。元のシナリオとその影響の詳細は、未来研究所にアクセスしてご覧下さい。
未来について唯一確かなことは、それがこれまでとは違ったものになるだろうということです。新しいテクノロジーによって、可能になることが変化するでしょう。社会的ムーブメントによって、受け入れられることが変化するでしょう。科学的発見や進化し続ける規範は、私たちが現在事実と見なしているものさえ変えるかもしれません。
変化や不確実性を排除することは不可能ですが、戦略的な先見性を利用して、何が起こり得るかを明確にすることができます。戦略的先見性は、現在のアプローチについての想定に疑問を呈し、共有された長期的視点を発展させ、長期的な脅威や機会を特定し、予見されていない可能性に備えることによって、皆さんが未来に備えるのに役立つ一連のツール、プロセス、考え方となります。要するに、戦略的先見性は、個人や組織が不確実な状況下でより良い意思決定をすることに寄与します。

コロナウイルスが世界中に拡散するにつれ、家族、企業、政府への挑戦となる不安定性やシステムの崩壊を引き起こしました。この世界的大流行によって、集合体としての私たちの未来に影響を与えている、より深い根底にある問題を露呈させましたが、それは変革への道も開きました。私たちは今、通常の状態に戻るだけでは今後十分ではないことを理解しており、私たちには、今後数年間に世界にどうあってほしいかを再考する機会があります。
次の10年がどのように展開するかを理解するため、十分に前もって起こり得る変化を予想できるよう、Alternative Future Scenario(未来のシナリオ案)として知られる確立された方法を用いました。未来のシナリオ案では、歴史のパターン、確立された傾向、および新たに登場しているシグナル(変化の証拠)が、どのように組み合わされて未来に影響を与える可能性があるかに注目します。シナリオは多くの場合急進的なビジョンですが、極端なものを強調することで、より可能性が高い未来に備えるための一助になります。
IFTFは、「成長」、「制約」、「崩壊」、「変革」という、より大きなテーマを中心に、パンデミック後の4つの代替シナリオを作成しました。これらのシナリオは、社会、企業、そして地球における多くの起こり得る変化の方向を指摘しています。
ここでは、「成長」(「継続」と呼ばれることもあります)と「変革」のシナリオに焦点を当てます。「成長」のシナリオは、ICT(Information and Communication Technology情報通信技術)に関する直接的影響を示し、2つ目は、今後待っている様々な機会に注目した時に何が可能かを探ります。
IFTFが調査したパンデミック後の4つの未来のシナリオ案を示すインフォグラフィック。
これらは、「巨大ITによる刺激」、 「Germ Podsによる制約」、「統治無きことによる崩壊)、「社会的連帯を通じた変革」による「成長」です。
構造的変化のない刺激
世界が伝染するコロナと闘い続ける中、経済は変動します。政府は銀行を救済し、さらに深い負債状況へと拍車がかかっている他の経済を犠牲にして、株式市場を下支えすることに焦点を合わせています。その結果、特定のセクターは他のセクターよりもうまく行き、体系的な不平等が全世界に反響しています。「大量退職」や「大量適応」は自動化への競争を完全に相殺するものではありません。エッセンシャルワーカーに免疫はありません。小売業者、教師、さらには病院の勤務者でさえ、新しく登場するデジタル世界とそれがもたらす新しいテクノロジーの中で、本来居る場所から追われていることに気づいています。
一部の従来産業(特に航空産業)は政府の補助金で運営を続けている一方、大手テクノロジー企業は勢いを増しています。健康に目を光らせる社会で提供内容を革新し、政府と協力して公衆衛生インフラを復活させることで、彼らは、あまりにも不可欠で解散させることができないとみなされている官民独占に発展します。これらの企業は、インターネットの次の段階である、新たに登場しているメタバースを構築する競争をします。彼らは新しい収入源獲得に適した位置にいるためそれに成功します。
市民の不安とトップへの刺激の10年が過ぎた後、回復モデル—U、V、W、Z、またはL字型—のいずれも、実際その10年間を説明していません。上部層の貯蓄過剰と下部層の増大する債務は長期的需要をゆっくり押し下げ、成長曲線はパンデミック初期の上下する波を反映しているようです。
普遍的、基本的幸福
世界的パンデミックの余波の中で、社会的結束の高まりは、その大小を問わず、コミュニティ全体に現れます。パーソナルヘルス(個人の健康)というものは存在しないことがますます明らかになっています。パブリックヘルス(公衆衛生)が唯一真の健康形態でとなります。世界的に失業率が高い状況で、さらに多くの国々において世論はUBI(universal basic income、普遍的基本所得)を支援する方向にシフトしています。世界中の大規模な抗議は、根本的な制度の変化に向けて世論を曲折させています。私たちは、自分たちのパンデミックの現実から学んできて、気候変動を緩和する喫緊の必要性を認識しています。
これらは全面的な変革の初期の状況です。2020年代のシェアリングエコノミーは、草の根のコラボレーションだけで望ましくない結果を回避するのに十分であるという、2000年代の欠陥のある仮定を修正します。制度、法律、規制、文化的規範の市民インフラは、社会を維持するために不可欠です。10年間の半ばまでに、初期の市民リテラシーは、資金の流れ、資産の所有権、社会的平等から災害対応に至るあらゆるものについて、地方の統治とコミュニティの所有権と、州、国、さらには全世界の監視とのバランスをとろうとしています。
2030年までの結果は、グローバルニューディールによる初見です。このニューディールの中核となるのは、UBIをはるかに超えて、普遍的な基本資産である幸福に不可欠な中心的資源に対するすべての人間の権利を擁護するためのフレームワークです。
通信、コネクティビティ、およびモビリティへの影響
普遍的な基本的幸福のパラダイムは、私たちに社会の基本的なインフラストラクチャを再考させます。このシフトにより、私たちはヘルスケアから教育、そして経済に至るまで、重要なシステムを再考し、再構築します。新しいテクノロジーは、包摂性、アクセシビリティ、持続可能性を念頭に置いて開発されています。インフラ企業は、社会がより明るい未来に向かって前進することに寄与するため、これらの価値観を採用しています。
上述の「成長」と「変革」のシナリオに加え、IFTFは、パンデミック後の未来に向けた「制約」と「崩壊」のシナリオも作成しました。「制約」のシナリオは、免疫、リスクがある、またテストされていないものから成る「germ pod」クラスターが独自の一連の規範と行動を展開する、制限が多い未来に注目しました。「崩壊」シナリオでは、私たちはシステムが故障する「統治が無い」状態を経験します。反政府勢力は社会を分裂させ、私たちをより大きな市民の不安に追いやります。未来のこれら両要素は、今ここに存在します。
未来のシナリオ案は、今日私たちが行うことに重要な意味があることを警告し、呼び起こし、明らかにするために役立ちます。今、それに向けて行動を起こせば、「変革」は可能です。テクノロジーは今後必要不可欠な役割を果たすでしょう。アクセス性、デジタル包摂性、地球の持続可能性を考慮すべき事項の筆頭に設定するために、各団体の参画を勧めます。
コロナとそれが生み出す諸状況が発展し続けるにつれコネクティビティ、通信、モビリティの未来も共に進化するでしょう。消費者と組織の需要は、新たに登場するニーズに応じて変化します。エリクソンの「コネクティビティおよび気候変動に関する報告書」が指摘する様に、「デジタル化は特効薬ではなく、それ自体が目標と見なされるべきではありません。これは、他の多くのツールがある中で、私たちの真の目標である、すべての人にとっての持続可能な未来達成の一助となる一つのツールです。」
2030年以降がどの様な様相を呈するかを正確に予測することはできませんが、出現する可能性のある可能性を探ることはできます。破壊的変化より先んじてチャンスを捉えるために、私たちは、次に何が起こる可能性があるかを問い続けるべきです。
著者について
マリーナ・ゴルビスは、シリコンバレーに拠点を置く 53 年の歴史を持つ非営利の研究およびコンサルティング組織である Institute for the Future (IFTF) のエグゼクティブ ディレクターです。リア・ザイディは IFTF の研究ディレクターです。